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*325話「気づかないふり」 ページ9

「A、今のどう思う?」

「え、えっと......」

「......大和、邪魔ならそれ殴っていいぞ」


呆れた視線を投げる大地さんが“それ”と顎で指したのは、
何故か距離感がバグっていらっしゃる孝先輩。

いや、可笑しいのですよ。
夜といえど暑いのに、ぴったりくっつかれてる。

さすがに抱き締められてる訳じゃないんだけど、
私の左側面(足、胴、腕、肩まで)がぴったりと
孝先輩の右側面と磁石のようにくっついてる。

見上げれば、すぐ近くにある孝先輩の爽やかな顔。

さっきから顔をあげれない......。
というか、心臓がドコドコとうるさい......。
気のせいか、下がった熱が上がった気がする......。

どうすればいいかわからず、とにかく俯いていると、


「ツッキイイイィィィッ!!」

「っ?!」


外から聞こえた大きな声に、体がはねた。


「今のって......」

「山口だな」

「ツッキーってことは月島?」


話がそれたことをいいことに、そっと右へ体を動かしたが、
腕を腰に回され、離れた分の距離を戻された。
ていうか、腰!! 手!!

そろり、と目を彼に向ける。だが、すぐに戻す。
ドッドッとうるさい心臓を服の上から握る。

いや、だって......何あの目。
慈しむような、愛でるような、
優しく甘い瞳に一瞬で血液が沸騰した。

暑い顔を両手で覆いながら、深呼吸。


顔が暑い。

心臓がうるさい。

足が震える。


たぶんこれは、羞恥といった類いではない。

直感的に察するも、“それ”に名前をつけたくない自分がいる。


だって、“それ”は怖いものだと知っている。

“それ”は抱いていけないものだとわかっている。


確かに浮かんだ“それ”の名前を振り払うように、
何度も吸って吐いてを繰り返しす。


だいぶ落ち着いたので、少しだけ手のひらを下げる。
口と鼻は覆ったまま、目元だけが出る位置まで。

すると、何か言いたげな大地さん。
首をかしげると、なんでもないと顔を横に振った。









このときより前から、
きっと“それ”は芽吹いていたことに、私は気づいていなかった。

否、“気づこう”としなかった......。

それによって、また“大切な人”を傷つけてしまうことにも。

*326話「月」→←*324話「あーいあい」



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星蛍(プロフ) - nasiremonさん» めちゃくちゃ嬉しいコメントをありがとうございます!! 頑張ります!! (2020年11月22日 14時) (レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon(プロフ) - 作品を拝見させていただきありがとうございました!オリキャラたちの人間関係かハイキューキャラとすごい(語彙力)感じに絡んでいてもう、、、本当にすごいです!!!過去篇では涙目になっちゃったし、こう先輩がっっ………!!!更新頑張ってください! (2020年11月22日 2時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 空良さん» ありがとうございます!最近サボりがちだったので面目ないです(_ _;)今月はガンガンこちらを更新しますよ! (2016年7月2日 7時) (レス) id: 60a59e3ad2 (このIDを非表示/違反報告)
空良(プロフ) - 続編おめでとうございます!いつも楽しく読ませていただいています♪更新お待ちしています(*´∀`) (2016年7月1日 23時) (レス) id: a94687914e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 | 作成日時:2016年7月1日 21時

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