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*321話「哀」 ページ5

もぐもぐと雑炊を咀嚼しながら、
意識したら緊張してしまった現状に心臓がうるさい。

谷地さんが入ってから潔子さんは彼女のサポート。
私は潔子さんの仕事が楽になるように動きつつ、
生徒会の仕事もやっていたので

こうして二人きりになるのは随分久しぶりだった。

わけのわからない緊張に身を包まれながら、完食する。


「ごちそうさまでした」

「お粗末様。貸して、片付けるから」


ベットから降りて自分で、と思ったが、
それより早くお盆を先輩に奪われる。

そして、両肩を押されて寝かされる。

自分ではもうだいぶ良くなったと思ったが、
寝るとどっと体が重くなったので疲れが残っているのがわかる。

されるがままに、ベットへ戻ると、
潔子さんは一回お盆を手に後ろを向いたかと思うと、
それをテーブルにおき、こちらを振り返った......。


「き、よこ......さん?」

「......ごめんね」


悲しそうな顔で、
哀しそうな声で言われた言葉に一瞬理解できなかった。

脳内処理が追い付いたとき、
潔子さんはそっとベット脇の椅子に座った。


「ごめんって何がですか?」

「......」


ふっと目をそらす先輩だが、
すぐに私の目を見て、重たそうな口を開く。


「Aちゃんが悩んでるときに
なにもしてあげられなくて、ごめん」

「......え」


思わなかった言葉に、目が点になる。

だが、潔子さんはそのまま続けた。


「最近、仁花ちゃんにばっか構っててAちゃんとしっかり話せてないのわかってた。
何か思い詰めた顔をしてたのも気づいてた。
でも、なんて声をかければいいかわからなかった」

「潔子さん......」

「マネージャーの件も。忙しそうだからって
気を遣ったつもりがAちゃんを傷つけた」

「それはっ」


私が勝手に思っただけだ。

昔を重ねて、勝手に悩んだだけ。


そう言おうとしたのに、
潔子さんは綺麗な手で私の口を押さえた。


「でも、やっぱりちゃんと言うべきだったって思ったの。だから......」


ごめんね、と言われた言葉は
本当に哀しそうな色を含んでいた。

*322話「ごめんなさい」→←*320話「手のひらから滲む」



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星蛍(プロフ) - nasiremonさん» めちゃくちゃ嬉しいコメントをありがとうございます!! 頑張ります!! (2020年11月22日 14時) (レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon(プロフ) - 作品を拝見させていただきありがとうございました!オリキャラたちの人間関係かハイキューキャラとすごい(語彙力)感じに絡んでいてもう、、、本当にすごいです!!!過去篇では涙目になっちゃったし、こう先輩がっっ………!!!更新頑張ってください! (2020年11月22日 2時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 空良さん» ありがとうございます!最近サボりがちだったので面目ないです(_ _;)今月はガンガンこちらを更新しますよ! (2016年7月2日 7時) (レス) id: 60a59e3ad2 (このIDを非表示/違反報告)
空良(プロフ) - 続編おめでとうございます!いつも楽しく読ませていただいています♪更新お待ちしています(*´∀`) (2016年7月1日 23時) (レス) id: a94687914e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 | 作成日時:2016年7月1日 21時

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