【HQ】烏に紛れている鷹 part8【烏野】

＊339話「意図しない避け」 ページ23

「田中、フリー！！」

「おっしゃああっ」


ダイレクトで叩かれたスパイクはアウト。

惜しいっ、とは思うが言わない。
ノスケには言わない。調子に乗るから。

ペナルティに向かうみんなを送りながら、
そっと孝先輩に気づかれないように彼を見る。



あのあと、女子の寝ている教室へ戻ると、
真赭さんから置いてきたタオルと飲み物を渡された。


「菅原が持ってきた」

「そ、ですか」


たぶん、声が震えたのに気づいたと思う。
だが、真赭さんは特に何も聞かず自分の布団へ戻った。

その優しさにほっとする。
正直、今聞かれてもなんて答えればいいかわからない。

そんなモヤモヤしたまま私も就寝した。


ま、当たり前のごとくあまり寝れなかった。
朝起きて早々そのことを真赭さんに指摘された。


「また倒れるなよ？」

「き、気を付けます」


そんな会話をしながら食堂に向かった。
そのときは孝先輩に合わなかった。

そうこうしているうちに藍さんが来て、
昨日来なかった分もなのか朝からテンション高かった。
なんで昨日来なかったんだろ？

で、午前中は音駒の手伝いに駆り出され、
昼は藍さんと木兎さんに絡まれ......。


つまり、わざとではないが今日は一度も話してない。

まあ、話したら話したで普通に話せるかわからない。
って、いやいや。部活にその私情は持ち込んだらダメだろ。

でも......。


「......Aさん」

「はいっ」


いきなり呼ばれた名前に驚いて返事する。

目の前には不機嫌な蛍君。


「ドリンクを」

「はっ、ごめんね！！」


とったまま渡してなかった手の中のものを急いで渡す。

ほらもうこういとこ。
邪念、煩悩は払え忘れろ持ち込むな。

とにかく、集中と気合いをいれたとき、


「......菅原さんと何かありましたか」


......なんでみんなして人の決意を踏みにじるの。

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