＊338話「時に体は心よりも正直」 ページ22
絡まっている髪に引っ掛かったのだろう。
鈍い痛みに反射的に振り向いた。
そして、息を飲む......。
インハイ予選前の帰り。
私が泣いたときよりは遠い距離。
でも、旭さんが戻る前。
私を抱き止めてくれたときよりは近い距離。
触れあう指に、感じる呼吸。
離れなきゃ。
そう思うのに、動かない......。
ねえ、孝先輩。
なんでそんなに哀しそうなの。
目元のほくろが涙に見える。
私、もしかして傷つけてますか？
泣いてる訳じゃないのに、
悲しそうな顔をしてる訳じゃないのに。
その瞳にあるのは“哀”。
なんで？
私の背を押したときの目は温かかった。
どうして？
私の震えを止めた手は温かかった。
孝先輩。孝せんぱい。こう、せんぱい。
「っ？！」
(え......)
目の前いっぱいにうつる孝先輩の顔。
驚きで目を丸くする顔。
そして、唇に感じる柔らかな温もり。
はっ、と気づいて離れる。
口を手で押さえながら呆然とする。
私は今何をした？
何をしていた？
自分がとった行動に体が震える。
「......A」
呼ばれた名前に顔をあげれば、
月明かりでもわかる赤い顔の孝先輩。
カッと血液が沸騰する。
「っおやすみなさい！！」
「Aっ！」
後ろから聞こえた声を聞こえないふりして、走る。
今だ残る唇の熱が、
自ら彼との距離を０にしたのを証拠づけていた。
嫌だ、と浮かんだ言葉に涙が出てくる。
どこかの空き教室に逃げ込み、呼吸を整える。
そういえば、タオルも飲み物も置いてきてしまった。
でも、今はそんなの気にしてられない......。
教卓の下に身を潜めて、じっとする。
“関係”を変えたくなかった。
このままでいたかった。
“嫌だ”と思った。
これがわからないのが嫌だった。
ポタポタと落ちる涙。
口許を手で覆いながら、目をつぶる。
気づきたくなかった。
“好き”だなんて、気づきたくなかった。
＊339話「意図しない避け」→←＊337話「すくいとられる」
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星蛍(プロフ) - nasiremonさん» めちゃくちゃ嬉しいコメントをありがとうございます！！ 頑張ります！！ (2020年11月22日 14時) (
レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon(プロフ) - 作品を拝見させていただきありがとうございました！オリキャラたちの人間関係かハイキューキャラとすごい(語彙力)感じに絡んでいてもう、、、本当にすごいです！！！過去篇では涙目になっちゃったし、こう先輩がっっ………！！！更新頑張ってください！ (2020年11月22日 2時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 空良さん» ありがとうございます！最近サボりがちだったので面目ないです(_ _;)今月はガンガンこちらを更新しますよ！ (2016年7月2日 7時) (レス) id: 60a59e3ad2 (このIDを非表示/違反報告)
空良(プロフ) - 続編おめでとうございます！いつも楽しく読ませていただいています♪更新お待ちしています(*´∀`) (2016年7月1日 23時) (レス) id: a94687914e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星蛍 | 作成日時：2016年7月1日 21時
