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*329話「幼馴染しか響かない言葉」 ページ13

区切りいいところまで話して、
ふぅー、と空気をはく。

さっきまで目を合わせなかった蛍君。
今は真剣な顔で私の話に耳を傾けていた。


「ま、それは辞めなかったり弱音をはかなかったり
するためのものかな」

「じゃあ、大和ちゃんにとってバレーとは?」


腕を組ながら聞いてくる黒尾さん。

その隣で木兎さんが何故かご機嫌な様子でいた。


「うーん......そうですね。
“プライド”でしょうか」

「......プライド」


小さく復唱する蛍くん。

私はそんな彼を横目に人差し指を下唇にあてる。


「あとは、」


“試合に出れない人”の思いを背負っているから。


真赭さん以外が息をのんだのがわかった。

彼らが誰を思い浮かべたのかは、だいたい予想できる。

でも、雪先輩だけじゃない。
早乙女の策で初めてのスタメン入りを取り消された子。
私の控えとしていたセッターの後輩。

自分が出るときは必ず誰かが出れないときでもある。


だから、


「私は最後まであそこにいたよ。
それが間違いとわかっていたけど。でも、」


誰かが入るはずだったポジションに私がついたから。

苦しくても、悲しくても、辛くても......。
怖くても、最後まで戦った。


全て話終えて、真赭さんを見る。

目が合うと、先輩は困った笑みを浮かべていたが、
頭をぐしゃぐしゃと撫でてくれた。労るように。


「......そうですか」


やっと発した蛍君。

相変わらず、冷めた表情をしていたが、
その瞳はこれまでにない光が灯っていた。


「ま、私の中での話だから。
ていうか、特殊すぎて参考にならんかもだけど」

「確かに。質問に沿った答えではないな。
木兎のほうがちゃんと答えてた」

「う゛......」


痛いところを真赭さんにつかれ、何も言い返せない。

ていうか、木兎さんに聞いたんだ。
なんて答えたんだろ。気になる......。

そう思い、木兎さんに聞こうとしたとき、
「いや、」という声に遮られた。


「そんなことないです」

「蛍君......」

「ありがとうございます」


礼儀正しく頭を下げる彼。

そのとき、先程の忠君の叫びが頭に響いた......。


思わず、口角があがる。


「どういたしまして」


どこか晴れ晴れとした顔に、
私や木兎さんが答えるよりも前に......。

幼馴染からしか伝わらない言葉が
彼に変化を与えたのだとわかった。



よかったね......。

*330話「生暖かい風」→←*328話「隣にたてなくても側に」



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星蛍(プロフ) - nasiremonさん» めちゃくちゃ嬉しいコメントをありがとうございます!! 頑張ります!! (2020年11月22日 14時) (レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon(プロフ) - 作品を拝見させていただきありがとうございました!オリキャラたちの人間関係かハイキューキャラとすごい(語彙力)感じに絡んでいてもう、、、本当にすごいです!!!過去篇では涙目になっちゃったし、こう先輩がっっ………!!!更新頑張ってください! (2020年11月22日 2時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 空良さん» ありがとうございます!最近サボりがちだったので面目ないです(_ _;)今月はガンガンこちらを更新しますよ! (2016年7月2日 7時) (レス) id: 60a59e3ad2 (このIDを非表示/違反報告)
空良(プロフ) - 続編おめでとうございます!いつも楽しく読ませていただいています♪更新お待ちしています(*´∀`) (2016年7月1日 23時) (レス) id: a94687914e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 | 作成日時:2016年7月1日 21時

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