検索窓
今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:88,191 hit

*239話「知っているならどうして?」向日side ページ17

すべてが話し終わったとき、昼の暑さはだいぶ抜けていた。


「なるほどねぇ」

「......」


ちらりと見た藍の顔は酷く冷たく、
彼女の怒り度合いが如実に現れていた。

それは結良も叶羽も感じとってるらしく、
緊張した面持ちで正座していた。

どうしたもんかと思っていると、先に藍が口を開いた。


「で、あんたたちがしたかったことはこんなこと(・・・・・)なの?」


こんなこと、と言われて鈍感な結良も
今回ばかりはわかったのか、顔を強張らせる。

叶羽は思い出しているのか、顔全体に力を込めていた......。


「Aを苦しめるためにきたの?」

「そんなわけっ」

「なに?」

「っ......」


何か言おうとするも、藍の威圧の前にそうそう口を閉ざす結良。

もうこれは挟まないほうがいいな......。

下手に口を挟めば、余計二人に圧力がかかると判断して、
とりあえず、今はなにも言わずに聞き手に回る。

藍は二人から視線をそらさず、
半ば睨み付けるようにして言葉を紡いだ。

かと、思われたが......。


「自分達がいっぱいいっぱいなのはわかる。
でも、それはAも同じだ。あんたたちだけじゃないんだよ」


ふぅと息を吐きながら額に手を当て俯く藍。

さっきの様子から攻撃的に責め立てるのかと思ったが、
怒りを抑えているのか、どこか疲れを滲ませたような口調で話し始めた。

だが、逆に二人にとっては精神的にくるものがあったのか、
叶羽は我慢していたものが溢れだし、結良も涙目になっていた。

藍はそんな二人をチラリと見て、
そしてあたしの方を見た。
そのアイコンタクトに苦笑しつつ、
正座している二人の頭をわしゃわしゃとかき撫でた。

びっくりして目を丸くする二人に目線を合わせる。


「Aに話したいことがあるんだろうが、今は待て」

「真赭先輩......」

「......今はまだ無理だろうから」


何がとは言わずとも伝わったらしく、
な、と言って笑いかければ二人は首を縦にふった。


とりあえず、こっち(・・・)は大丈夫だな......。


あたしはもう一人の後輩(・・・)が出ていったドアを見ながら、そう思った。

*240話「沼と熱」→←*238話「過去編〜災厄のレモネード〜」東雲side



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (45 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
108人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

星蛍(プロフ) - ゆっぴぃさん» ありがとうございます!来年1月からハイキューが始まると聞いて最近更新を頑張っている次第です笑 パスワードにつきましてはこちらのミスです。すみません!!今日中に解除します!! (2019年11月19日 11時) (レス) id: b5b09ffd1d (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 猪絢さん» ありがとうございます!パスワードは解除したつもりでした。すみません!!今日中に解除しておきます!! (2019年11月19日 11時) (レス) id: b5b09ffd1d (このIDを非表示/違反報告)
ゆっぴぃ(プロフ) - 凄い面白くて毎回更新楽しみにしています。7章はパスかかってるので見れないのが悲しいです。近々見れるようになりますか?早く続き読みたいです。 (2019年11月19日 10時) (レス) id: 3c7526cd22 (このIDを非表示/違反報告)
猪絢(プロフ) - 面白くて読み込んじゃいました!7章パスワードかかってた見れないのですがまだ書き途中だったりするのでしょうか…? (2019年11月19日 1時) (レス) id: 262406d3d0 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 杏樹さん» それは良かったです!ありがとうございます(^-^) (2019年11月18日 22時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:星蛍 x他1人 | 作成日時:2016年1月8日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。