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*215話「……」菅原side ページ41

みんな何も言わない。いや、言えない……。


「Aは本気でやめようとしていた。
だから、雪椛はああしたんだ」

「それが逆にAを苦しめることもわかっていた。
それでも、雪椛は部活を取った。部のために、自身の思いをAに託した」


二人は自分を蔑むかのように笑った。

何もできなかった自分たち、
それをAの憧れている先輩に任せてしまった。

辛かったはず。でも……。


「雪椛も苦しかったともうけど……」

「言わないだけで、ね……」


悲しそうに笑いあう二人。

そうだ。きっと佐伯さんも苦しかった。
Aも、彼女たちも、みんな苦しかった……。

天井を仰ぎ、目を瞑る。

俺にはできるだろうか……?
いや、きっと無理だ……。

自分に降り注いだ災厄を理解し、現状を受け入れるなんて……。

それをその瞬間に受け入れて、
Aに優しい言葉をかけられる彼女は本当に……。


「すごいな……」


ふとつぶやいた大地の言葉に共感したのは俺だけじゃないはず。

目を開けて、周りを見れば大体同じような表情をしていた。


「あの、それで、その……佐伯さんは今どうしてるんですか?」


梟谷の赤葦君がおそるおそる彼女たちに聞いた。

彼なりの気遣いだったが、
彼女たちは思ったよりも明るく笑って教えてくれた。


「普通に宮城県内の高校へ進学したよ」

「技手とリハビリで普通に公立に行ったんよねえ」

「それって、かなり大変だったんじゃ」


夜久君が驚いたように言った。


「大変だったはず。でも、あいつはそこまで気にしてない。
もちろん、辛かったはずだ。でも、“普通”にさせたかったんだとよ」

「普通に?」

「うん……じゃないと、いつまでもAが気にするからって」


そこでAがどれくらい彼女を慕っていたかわかった気がした。




___「ごめんなさい」

___「せ、…か…さん」



あの涙のわけも……。


「Aは……幸せだな」


こんなに良い先輩たちに囲まれて……。

*216話「過去編〜制服に着られる一年生〜」→←*214話「過去編〜消えたものと残ったもの〜」



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星蛍(プロフ) - 麗さん» 視点のほうは自分でも常々思っていたので、今目次のほうに表示するように付け加えています! p.43の件は言わんとしていることはちゃんと伝わりました! そうですね。書き直しておきます。 (2020年11月22日 14時) (レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 43ページ はそれぞれ の後の ウイングスパイカー と ベストセッター 書く順番逆の方がお話の流れ的にしっくり来ると思います。 夢主がセッターなのに ウイングスパイカー に思えてしまうので、、、、 上手く伝えられなくてすみません (2020年11月12日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 一気にお話を読んでいる途中なのですが、夢主視点じゃない時、誰視点なのか分かりづらくて読みづらいなと感じてしまいます。 (2020年11月12日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 紫野さん» ありがとうございます!!更新頑張ります! (2015年12月31日 12時) (レス) id: 60a59e3ad2 (このIDを非表示/違反報告)
紫野 - 面白いです!続き楽しみにしてます! (2015年12月31日 12時) (携帯から) (レス) id: 5ae5725b61 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 x他1人 | 作成日時:2015年11月9日 21時

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