＊212話「過去編〜消えたものと残ったもの〜」 ページ38
やめると言った私を見て、あからさまに嬉しそうな顔をする先輩方。
「何言ってんだよ、A！！」
「そうだよ！！」
必死に止める結良と叶羽。
真赭さんと藍さんは何も言わず、顔を歪めていた。
私は人形のように何も反応できず、揺さぶられていた。
これでいい。
これでいいんだ……。
すっと目を閉じると、今までのことが走馬灯のように流れた。
肩を掴んで必死に説得する二人の手を離し、
そのまま病室を出ようとした。
「A、待って」
ドアノブに手をかけたとき、聞きなれた声が病室に響いた
振り向くと、いつの間にか起き上がっていた雪椛先輩が私を真っ直ぐ見ていた。
このときになって、雪椛先輩の目を一度も見ていなかったことに気づいた。
「雪椛、まだ起きちゃ」
雪椛先輩は駆け寄る藍さんを制する。
そして、先輩方に視線を映した。
「さっきのAのやめるという話なしにしてくれませんか」
まっすぐに先輩たちに向かって言った雪椛先輩の目には
悲しさも、寂しさも、ましてや苦しさも見えなかった。
そこには、何かを決意したかのような強い目。
でも、そんなことを言ったところで先輩たちも
「ええ、そうね」と引き下がる人たちではない。
案の定、困惑しながら反対した。
「何言ってんだ、雪椛っ」
「こいつはあんたの腕を奪ったのよ！？」
「だからなんですか」
迷いない口調できっぱりと言い返す雪椛先輩。
普段から先輩たちに言いかえすことのない雪椛先輩なだけに、
先輩たちは驚いたようだった。
「それを責めるのはあなたたちじゃない。私です。
何をはき違えてAを責めているんですか？ 勝手なことしないでください」
さすがにそこまで言われるとカチンときたのだろう。
私の頬を叩いた先輩が、雪椛先輩を睨む。
「お前、何様なの？」
威圧的に言う先輩だが、それにも怯まず雪椛先輩も言い返した。
「あなたたちこそ何様なんですか？ 気に入らなければ、相手の悪口、いやがらせ。
それがスポーツをする人のやることですか？ 伝統ある千鳥山バレー部のやることですか？
本当に最低ですね。これは私とAの問題です。部外者が口出ししないで！！！」
いつになく怒りを露わにする雪椛先輩。
先輩たちは怯んだようで、口を噤んだ。
シーンと静まり返る病室で、私は茫然とそのやり取りを見ていた……。
＊213話「過去編〜消えたものと残ったもの〜」→←＊211話「過去編〜消えたものと残ったもの〜」
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星蛍(プロフ) - 麗さん» 視点のほうは自分でも常々思っていたので、今目次のほうに表示するように付け加えています！ p.43の件は言わんとしていることはちゃんと伝わりました！ そうですね。書き直しておきます。 (2020年11月22日 14時) (
レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 43ページ はそれぞれ の後の ウイングスパイカー と ベストセッター 書く順番逆の方がお話の流れ的にしっくり来ると思います。 夢主がセッターなのに ウイングスパイカー に思えてしまうので、、、、 上手く伝えられなくてすみません (2020年11月12日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 一気にお話を読んでいる途中なのですが、夢主視点じゃない時、誰視点なのか分かりづらくて読みづらいなと感じてしまいます。 (2020年11月12日 22時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 紫野さん» ありがとうございます！！更新頑張ります！ (2015年12月31日 12時) (レス) id: 60a59e3ad2 (このIDを非表示/違反報告)
紫野 - 面白いです！続き楽しみにしてます！ (2015年12月31日 12時) (携帯から) (レス) id: 5ae5725b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：星蛍 x他1人 | 作成日時：2015年11月9日 21時
