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*144話「それでもいい」月島side ページ12

彼女の言葉に動揺したのに気づいたのか、

彼女は抑えていた拘束から抜け出し、
傷口に添える手を押しのけようと僕の手を掴んだ。

だが、ここだけは退かすわけにはいかないと思い、
力を込める。


痛いだろうに……。
僕の手を退けようと躍起になる彼女に問いかける。


「どういうことですか……?」


そう聞けば、彼女は動きを止めた。


「……月島君、私のこと好きでしょ。恋愛的な意味で」


なんとなく気づいているだろうなと思っていたので、
それにはあまり驚かなかった。


「そうですね」

「これも、自分の株をあげたいだけなんでしょ」

「……違いますよ」


いや、違わないかもしれない。
あわよくば、とは思っている。

でも、それとこれは今関係ない。


「私はこんなことされたって君を好きにならない」

「そうですか」

「付き合いたいなんて、思わない」

「そうですか」

「ていうか、迷惑だし」

「いってましたね」

「む、むしろこんなことされても嫌悪感しかわかない」

「そうですか」

「っ嫌いだってば」


叫ぶようにして言われた言葉に、
それまで淡々と返していた言葉が止まる。

ハンカチを一旦退かして、彼女の頬に手を伸ばす。
さっきは避けられてしまった手は、今度は受け入れられた。

ゆっくり、顔をあげさせれば……。


「説得力、なさすぎ」

「っ……」


さっき止まった涙が、彼女の頬を濡らしていた。


「弱みにつけこんでない、とは言いません。
あわよくば、とは思っています。

でも、それ以上にあなたを放っておけません。

拒絶されても、嫌いだと言われても、結局僕はあなたが好きです。
好きな人が苦しんでいるのに、放っておくことなんてできません。


あなたが……好きだから」


そっと涙を拭えば、
一瞬だけ目が見開かれた。

でも、もう限界だったのだろう。

がくんと力なくうなだれたと思ったら、
堰を切ったように彼女は泣き出した。

僕の胸にすがりつくようにして……。
まるで何かに許しを請うようにして……。

*145話「おんぶ」→←*143話「たまたまだった」月島side



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星蛍(プロフ) - 麗さん» コメントがすっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。そうですね。検討しておきます! (2020年11月22日 14時) (レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 28ページ こっちゃん とあだ名?で呼ばれていますが、これは固定なのでしょうか? 名前変換出来るのにあだ名だけが固定だと不自然に感じます。 固定の名字から取るなら分かるのですが変換出来る名前から取ったあだ名だと違和感あります。 (2020年11月12日 19時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - ムーンさん» すみません!!変換機能をオンにするの忘れてました。直したので、名前変換できると思います。 (2019年2月25日 17時) (レス) id: 4856ab23f3 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - 名前がずっと古都となっているのですが変換はできないのですか? (2019年2月24日 22時) (レス) id: dbcb69aa60 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 夢花 (仮垢)さん» 返信遅れてすみません!! ほめ言葉として受けとります笑 ありがとうございます! (2019年2月22日 18時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 | 作成日時:2015年10月14日 20時

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