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*158話「気まずい……」 ページ26

「「あ……」」


重なったお互いの声。
そして、一気に気まずくなる空気。

私と真赭さんは水道の前で再び対面していた……。



潔子さんとドリンクを作っていたのだが、
別な仕事を任せた谷地さんの働きぶりが、ちょっと、まあ……。

なので、「ここは大丈夫ですから」と言って
潔子さんが彼女の方へ行った矢先のことだった。

会話のない微妙な沈黙が私たちの間を流れる。
いや、沈黙でもないか。
体育館に近いところなので、試合をしている選手の声やホイッスルなどは聞こえてくる。

それでも、中学の頃、仲が良かったであろう先輩と会話がない状況は結構堪える。
ましてや、久しぶりに会ったのに拒絶した……。

謝るべきなのに、言葉が出てこない……。

どうしよう、どうしようと思いながら、
ドリンクを作っていく。

ラスト一本になり、本格的に焦り始めたころ、
真赭さんが口を開いた。


「……顔色」

「へ?」

「思ったより顔色よくて安心した」


元気という言葉を使わなかったのは、
たぶん彼女なりに私の様子を気遣ったからだろう。

真赭さんはこちら見ずに、淡々とドリンクを作っていく。
私は最後の一本を作り終える。


「ていうか、あたしらといるときより表情豊かで妬く」

「あはは……」


それも本来の私(・・・・)ではないけど……。

なんか、私隠し事多いな……。
なんだか悲しくなってきて、水道の縁に軽く腰掛けながら指をいじる。

会話が止まり、真赭さんがドリンクを作っている音がやけに響く。


「……ごめんな」

「……え?」


一瞬聞き逃しそうになった、彼女の謝罪。

驚いて振り向けば、
さっきとは違いこちらを見ていた。


「今朝はごめん。無神経だった」

「っ……」


真剣に頭を下げて謝る真赭さんに息を飲む。

なんで?
謝るのは私の方なのに……。

そう言いたいのに、言葉が出てこない。
情けない自分に腹が立ち、唇を無意識に噛む。

そのとき、ふっと頭にぬくもりを感じた。

*159話「母のようなぬくもり」→←*157話「ダークサイド」



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星蛍(プロフ) - 麗さん» コメントがすっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。そうですね。検討しておきます! (2020年11月22日 14時) (レス) id: 1ee6b4a9bd (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 28ページ こっちゃん とあだ名?で呼ばれていますが、これは固定なのでしょうか? 名前変換出来るのにあだ名だけが固定だと不自然に感じます。 固定の名字から取るなら分かるのですが変換出来る名前から取ったあだ名だと違和感あります。 (2020年11月12日 19時) (レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - ムーンさん» すみません!!変換機能をオンにするの忘れてました。直したので、名前変換できると思います。 (2019年2月25日 17時) (レス) id: 4856ab23f3 (このIDを非表示/違反報告)
ムーン(プロフ) - 名前がずっと古都となっているのですが変換はできないのですか? (2019年2月24日 22時) (レス) id: dbcb69aa60 (このIDを非表示/違反報告)
星蛍(プロフ) - 夢花 (仮垢)さん» 返信遅れてすみません!! ほめ言葉として受けとります笑 ありがとうございます! (2019年2月22日 18時) (レス) id: 3b9001af19 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:星蛍 | 作成日時:2015年10月14日 20時

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