【HQ】烏に紛れている鷹 part4【烏野】

＊148話「モヤモヤ」 ページ16

練習試合後、扇西高校も帰り、後片付けをしていた。


「すごいねっ、すごかった！！
私見ているだけなのに、こう、こう……」

「グワアッときたっ？」

「うんっ、きたっ」

「じゃあ、マネージャーやって！！」


体育館入り口付近で行われている、
翔ちゃんと谷地さんの会話に苦笑する。


「ちょっと会話がね。意味不明だよね」

「あはは……」


ていうか、擬音語で通じる感覚派がここにもいるとは……。

黙って見守っていたら、突然こちらを見た谷地さんと目が合う。
すると、合った瞬間に顔が赤くなったり、青くなったりと挙動不審になる……。


「……嫌われている？」

「違うと思いますよ」


結構な小声だったのに、蛍君にぴしゃりと否定される。

ちらりと横にいる彼を見れば、いつもの無気力そうな顔が合った。

だが、その眼は心配が滲んでいて、
さっきの言葉は彼なりの激励？だと察する。


「ありがと」

「別に」


近くにいる山口君でも聞こえない声量で話をする私達。
短い会話に、昨日のようなじとりとした感情が軽くなる。

そのまま影山君と翔ちゃんをからかいにいった蛍君の背中を見つめる。



昨日の一件から、どことなく彼との関係が変わった気がする……。

彼の気持ちを知りながら、甘えるなんて……。
とか、思いつつも、今の私の精神状態からして彼は良い安定剤だった。



彼が背中を向けていることをいいことに、
そっと微笑んでいるとき、たまたま彼が振り返った。

目が合った途端、ほんの一瞬赤くなった蛍君。

勢いよく、またこちらに背中を向けたので照れているのだと察する。

いつもはクールでどことなく大人びている彼の初々しい一面。
なんか可愛いなあ、と思ってこっそり笑いをこぼした。



後ろで、そんな私を見ている人に気づかず……。

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