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非常階段から車に戻り、ピンガが拉致した少女を後部座席に寝かせると、ウォッカのインカム越しに楽勝だね、というキャンティの声が聞こえた。
『……キャンティも来てたのね。』
ウ「フン、何処までも耳がいい奴だな。キャンティは近くの丘にあった廃墟に待機させてあるんだよ。」
口調は荒いながらも訊かれた事にはちゃんと返答するウォッカ。
その瞬間、車のボンネット目掛けて拳を振り下ろしながら女が降ってきた。
ピ「なんだお前は!?」
?「哀ちゃんを返しなさい!」
女は驚いて声をあげたピンガに狙いを定めると、彼に向かって次々と攻撃を放つ。
『(はぁ……。一番好戦的な奴を狙うとは……。)』
レナはピンガに攻撃を避けられている女に苦笑すると、ホテルの方を見上げる。
『(……この人が空から降ってきたって事は、確実に私達の存在が気付かれてる。ということは、このホテルの何処かしらに仲間が居そうなものね……。)』
例えばバルコニーとか?と思いながら、レナはバルコニーに不審な人影が無いかを見ていく。
すると、日中にパシフィック・ブイで見た少年が目に入った。
『(どうしてあの子が……?というか、あんなベルトみたいな物であの子は何をしようと……?)』
ふと、ピンガが気になって目線を変えると、水面蹴りで女の足を払う彼の姿が見えた。
『(……あー、ナイフ取り出した……。)』
ピンガが相当苛立ってきている事を感じ取ったレナは再びコナンが居たバルコニーに目を向ける。
しかし、その姿は何処にも見当たらなかった。
『(……居ない!?)……ウォッカ、いつでも車を出せるように準備しておいて。あと、キャンティに“私が合図するまでは撃たないで”って言っておいて。』
ウ「おい、レナ!?」
何か嫌な予感がして、レナは車の前を通り、ピンガの加勢に向かった。
しかし、一歩間に合わず、ピンガは女の回し蹴りを首に向け、他の車の屋根に吹っ飛ばされた。
『(……こうなると後が面倒くさいのに、よくもやってくれたわね?)』
溜息をつくと、レナは宿泊客の車の前を音を立てずに移動し、ピンガと女に近付いていく。
そんなレナの様子を見て闇討ちしようと考えていることに気付いたのか、ピンガはニヤリと口角を上げた。
ピンガは女の意識がレナではなく自分に向くように、勢いよく車の屋根から飛び降りて走り出す。
すると女も、待ちなさい!と言いながらピンガを追いかけようと車の間から飛び出した。
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ルナ - とっても面白いです。ドキドキしながら見せてもらってます (8月24日 21時) (レス) @page42 id: 63c03aa9bf (このIDを非表示/違反報告)
箱 - 素敵な作品ありがとうございます (7月27日 21時) (レス) id: 4edc0c80af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優理 | 作成日時:2023年7月26日 18時