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『……此処にシェリーが……?』
豪華そうな造りの建物へと続いている坂道を走行中にベルツリーホテルの看板がチラッと見え、レナは呟いた。
駐車場に車を停めると、ピンガは後部座席のレナの方を向いた。
ピ「縄を切るから、手を出せ。」
レナが素直に両手を差し出すと、ピンガは持っていたナイフで手を拘束していた縄を切った。
『……ありがと。足は自分でやるわ……。』
そう告げると、レナは自由になった右手を履いている黒のパンプスのソールへと移動させる。
其処から小さな折りたたみナイフを取り出すと、自分の足の縄を切り解いた。
『……ちょうど今履いてる靴が任務でよく使ってるハイヒールでよかったわ。』
ピ「……なるほど。道理でレナの服のポケットを漁ったときには気付かなかったワケだな……。」
『ああ、そういえばドイツで私のスマホを探したって言ってたね……。』
あの時は直美の拉致だけで済むと思ったのに、とレナは内心悔やんでいた。
『それで?この後の流れは?』
ウ「非常階段を使ってガキの居る部屋まで行く。部屋に侵入してからはお前がガキの顔を確認し、シェリーだと確信したらそのまま其奴を連れてずらかる。ガキが抵抗を見せたら、直ぐさまピンガが眠らせるがな。」
『じゃあ、アンタは見てるだけってこと?』
いいご身分ね、と皮肉を言った。
ウ「まぁ、見ているだけとも言えるな……。」
レナが切った縄を車内に捨てると、3人とも車から出た。
すると、突然ウォッカがレナの両手を掴み、彼女の背後に回り込んだ。
『……ッ!?何のつもり!?』
ウ「言ったはずだぜ?“見てるだけ”だと……。」
『……まさか……。』
ウ「あぁ、俺の役目は“レナの監視”だ。お前が俺らを倒してシェリーに似たガキを逃がす可能性もあるからなぁ?」
『私が1人で、拳銃の扱いが上手いアンタ達を倒せるとでも……?』
ウ「お前が意外と武闘派だとキャンティから聞いた、と言っただろ?分かったら、さっさと歩け。」
ウォッカは奥歯を噛みしめているレナの両手を片手で拘束したまま彼女の身体を押し、ホテルの非常階段の方へと歩かせる。
そんな様子を見ていたピンガは深く息を吐くと、サングラスをかけ直し、2人の後を追った。
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ルナ - とっても面白いです。ドキドキしながら見せてもらってます (8月24日 21時) (レス) @page42 id: 63c03aa9bf (このIDを非表示/違反報告)
箱 - 素敵な作品ありがとうございます (7月27日 21時) (レス) id: 4edc0c80af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優理 | 作成日時:2023年7月26日 18時