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『はぁ?もう、どういうこ……ッ!?』
スマホを机に置くと、レナはベッドに向かおうと振り向く。
すると、通話に夢中で気付かなかったが、背後には男物のスーツを着てズボンのポケットに右手を入れたままのピンガが立っていた。
『……音がしなかったから気付かなかったけど、いつから居たの?というか、私、扉……?』
ピンガに近付きながら話し掛けるが、そこまで呟くと流石にレナもピンガが此処に居ることに違和感を持ち始めた。
『(そう言えば、さっきウォッカが“そのまま眠っちまえ”って……。)』
まさか、と不穏な考えが頭によぎり、ピンガから離れようと自然に足が後ろに動く。
しかし、数歩で自分が居た机にぶつかり、逃げ道が無くなってしまう。
レナが後ろに気を取られている隙にピンガはレナとの距離を詰め、彼女の後頭部に左手を添える。
『……ピン、ガ……?』
ピ「……ごめん、な……。」
呻くようにそう言うと、ピンガはレナの頭を自分の方へ引き寄せる。
普段なら絶対に聞かないような弱々しい声をピンガが出したため、レナは彼が誰に何を言われたのかを理解してしまった。
『……どうしたの?……ねぇ、なんで、そんなに……そんなに苦しそうに、言うの……?』
何も気付いていないフリをしながらそう呟くと、レナはピンガの腰に両腕を回し、軽く抱きしめる。
その行為によってピンガはレナの真意に気付くと、ポケットの中に入れたままだった右手を外へ出した。
チラリと何かを持っていることを横目で確認すると、レナは手の中にある折り畳まれた布が自分の口元を覆うようにピンガの右手を運んだ。
ピ「……ラムからの命令なんだ。お前を連れてウォッカを手伝え、って。ただ、奴の話だとレナが抵抗する可能性があるから眠らせるか気絶させるかしてから連れて来いって。」
顔を歪ませながらも、ピンガはレナに経緯を話していく。
そんな様子を見守るレナは相槌を打ちながらも、ゆっくりと呼吸を繰り返していく。
徐々に目の前が暗くなり、意識が遠のいていく。
すぐ近くから、ほんとは傷ついてほしくねぇのにな……、と辛そうに呟くピンガの声が聞こえてきた。
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ルナ - とっても面白いです。ドキドキしながら見せてもらってます (8月24日 21時) (レス) @page42 id: 63c03aa9bf (このIDを非表示/違反報告)
箱 - 素敵な作品ありがとうございます (7月27日 21時) (レス) id: 4edc0c80af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優理 | 作成日時:2023年7月26日 18時