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「…Aちゃん、これからちょっと時間ある?」
「……え、なんで?」
「いや、これから一緒に酒でもどうかなーって」
「斎藤くん芸能人だよね?そんなことしちゃ…」
「あ、え、知ってくれてるの?」
やべー、嬉しい、と顔を手で覆う斎藤くん。
「当たり前じゃん、知ってるよ?」
そっか、と照れたように笑う斎藤くん。思わず昔の感覚が蘇る。
「俺は大丈夫。個室があるお店だし。」
「そうなんだ、」
まぁどっちにしろお酒は飲む予定だったし、少しくらいならいいかな。
「じゃあ行こうか。」
「いいの?」
コクリと頷くと、斎藤くんは優しくにこ、と笑う。
行こう、と言われて私は斎藤くんの後ろをついて行った。
斎藤くんは、ある1軒の居酒屋で足を止めた。
「ここでいい?」
「うん、大丈夫」
慣れたようにお店に入る斎藤くん。
久しぶりに見る背中は、前より少し大きくなった気がした。
相変わらず体は薄いけど。
「生ビール1つ下さいー」
「あ、私はハイボールください!」
ああああああああぁぁぁ!やっぱりお酒って美味しい!
そう心の中で叫ぶ。
「Aちゃん、結構お酒呑むんだね。」
「うん!今日は仕事で悪いことしか無かったから尚更ね!酒呑むと嫌なこと忘れられるよね!」
私は勢いよくハイボールを流し込んだ。
「それ、田淵も同じこと言ってた!」
「たぶち?」
田淵…懐かしいな。
田淵も同級生で、よく喋ってたな。
今はUNISON SQUARE GARDENとして、斎藤くんと鈴木さんと一緒に活動をしているんだよね。
「いや、仕事のとき田淵も同じようなこと言ってたなーって思って。」
そう言ってケラケラと笑う斎藤くん。
笑っている姿も、喋ってる姿も、楽器の演奏も…昔から変わってないなぁ。
「…あのさ、」
「うん?」
「……LINE交換しない?」
「え!?」
驚いて思わず大きな声が出る。
いや…何を言ってるの。
私たちは元カレ元カノの関係だよね?ましてや斎藤くん芸能人だしね?
…………そんなこと言われたら期待、しちゃうじゃんか。
「…ダメ、かな?」
「………いや、ダメって言うか…
私たちは1回別れてるでしょ?それはね、斎藤くんが私を放っておく位大切な音楽をもっと大事にして欲しい、って思ったからなんだよ。」
「…え、?」
「まぁ斎藤くんは実際私のこと嫌いになってたのかもしれないけど…」
「………」
目が泳いでいる斎藤くん。
こんなこと言っても伝わらないか。
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妃乃(プロフ) - y u S i N a さん» ありがとうございます!来週、再来週あたりに作りますね。 (2020年6月20日 17時) (レス) id: 8da7cc816c (このIDを非表示/違反報告)
y u S i N a - いつも楽しく読ませていただいております。妃乃さんの表現描写、とても好きです。リクエストで斎藤さん×ぬいぐるみのエピソードを交えたお話をお願いしたいです_(._.)_ (2020年6月20日 15時) (レス) id: ca1db114c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:妃乃 | 作成日時:2020年6月5日 15時