期待と苦い思い出 ページ1
．
｢はぁぁ…｣
今日は散々だ。
上司にはキツく叱られるし、仕事は押し付けられるし。本当にうちの会社はとても社員に厳しい。
よし、今日も家でお酒を呑んで忘れよう！
‘ 酒を呑んで嫌なことを忘れられる ’っちゅうのは大人の特権だよね。
ドンッ
｢うわ、｣
｢あ、すみませ…｣
すれ違った人と肩が激しく肩がぶつかった。
その人はハッとした顔をすると何故か私の顔をまじまじと見つめてきた。
｢…あれ……Aちゃん？｣
｢え
斎藤、くん…？｣
マスクと帽子をしてるからよく分からないけど、長い前髪から覗くきらきらした目と、その爽やかな雰囲気で予想が確信に変わった。
この人は同じ大学だった斎藤宏介くん。
彼はもともと端正な顔立ちでかつ話し上手だったため、女子にも男子にも人気だった。
｢久しぶりだね、元気してる？｣
｢うん、まぁ。｣
少し気まずい空気。
なぜなら彼は、私の元彼だから。
15年前、交際は私から告白して始まった。
最初の方は普通に付き合ってた。
デートもするし、家に遊びに行ったこともある。
でも少しずつ少しずつ、彼は当時組んでいたバンドの活動を優先してしまうようになった。
しまいにはもう半年会わなくても彼は連絡をしてくる事がなくて、電話をしても出なくて。
｢もう私のこと好きじゃなくなったんだね。
…バンド頑張ってね。今までありがとう。さよなら。｣
やっと電話に出てくれたタイミングで、私はそう言い放った。
電話越しに必死でAちゃん、ちょっと待って と呼ぶ声が聞こえたけど、聞こえないふりをしてブチ、と電話を切った。
もちろん、斎藤くんのことはまだ好きだった。
音楽に向き合う姿勢も、なんだかんだ言って尊敬していたしかっこよかった。
だからこそ音楽をもっと頑張って欲しいし、でも音楽をやってたら私はもう耐えられないし…という理由で私は一方的に彼を振ってしまった。
もうあれからどれだけの月日が経ったか。
それもいい思い出と呼べるくらいになった。
結局彼はあの頃のメンバーでデビューして、今も活躍しているもんね。
あれでよかったのかもしれない。
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妃乃(プロフ) - y u S i N a さん» ありがとうございます！来週、再来週あたりに作りますね。 (2020年6月20日 17時) (
レス) id: 8da7cc816c (このIDを非表示/違反報告)
y u S i N a - いつも楽しく読ませていただいております。妃乃さんの表現描写、とても好きです。リクエストで斎藤さん×ぬいぐるみのエピソードを交えたお話をお願いしたいです_(._.)_ (2020年6月20日 15時) (レス) id: ca1db114c6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：妃乃 | 作成日時：2020年6月5日 15時
