潜書貮・ ページ3
坂口は路地裏を抜け、大通りに出た。
そのまぁ珍しい事、有碍書の中だと云うのに一般市民と思わしき人が従来している。
坂口は不思議に思いながらもただ歩いた。
この市民全員が侵食者ではないようだ。
本当の敵は何処だ?
「アイツら居ないな」
仲間の姿も無い。仲間の服装や髪色は人目を引くくらい目立つので人混みでも分かる筈だ。
なのに居ないという事は潜った衝撃でそれぞれ何処か遠くに送られたらしい。
潜書にトラブルは付き物だが、これは流石に酷い。
このまま歩いていても埒が明かないので、坂口は一旦、人混みからはずれ懐に入れていた武器を本の中に仕舞った。
が、次に予想外の出来事が起こった。
『君、今何をしました?』
ふいに後ろから声がした。
見られたッ!
そう思いながらも冷静を保ち坂口は振り返った。
声の主は丸眼鏡が特徴の中肉中背といった男性だった。
「よぉ、お兄さん。今の見たか?」
『えぇ見ましたとも。異能の所持者の様ですね。』
「異能?」
一瞬、頭にハテナが浮かんだが、そういえば司書はこの本は異能バトル物と云っていたなと思い出した。
『まぁ、僕の仕事柄、異能は珍しい物ではないですが。』
「へぇ?仕事柄ねぇ。お兄さん名前は?」
お兄さんと呼びながら、坂口は何処か舐めた口調だ。
『僕?僕は坂口安吾です。』
「なっ・・・坂口、あん、ご?」
約五米ほど離れた相手に坂口は混乱を覚えた。
コイツが、坂口安吾?
『貴方は?』
「俺か?俺は・・・・伊沢だ。」
咄嗟に出た嘘は自著作、白痴の登場人物の名だった。
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エリカ - すごく面白かったです!続きを待っています! (2018年3月17日 10時) (レス) id: e5d2f5896d (このIDを非表示/違反報告)
庵 - こういうの探してました!いやぁ、これは鼻血もんですね。更新期待してます。頑張って下さい!! (2018年3月10日 0時) (レス) id: 359f234116 (このIDを非表示/違反報告)
くれーぷ/紅花(プロフ) - 文アルと文ストどちらも好きな私にとっては嬉しすぎて昇天しそうでした…← 出てくる文アルキャラが文ストキャラと同じ名前の人だけじゃなく色々な人が出てくるのですごく面白いです!更新楽しみにしてます( ´∀`) (2018年1月23日 19時) (レス) id: d036a490f0 (このIDを非表示/違反報告)
きのこ - 面白かったです。すこし気になったのですが、登場人物が侵食者というのは、作者さんのオリジナルでしょうか? この前別の小説で見たことがありまして…。偶然ならいいのですけれど、少し気になりまして…。 (2018年1月20日 18時) (レス) id: 48db98a9a7 (このIDを非表示/違反報告)
苺パフェ - とても面白かったです!ボクは空白のSecretさんのほかの作品からここにきたのですが、どの作品も面白くてすごいです!応援しているので、頑張ってください! (2018年1月20日 13時) (レス) id: 92fa33393a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:空白のSecret | 作成日時:2018年1月7日 22時