徒然なる文豪【文アル】 (ページ1)

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幼少に得るものページ1

その蒼き双眸に、何を映すも彼は悪戯に笑みを浮かべいるだろう。

大人は嫌い、だと何回も少年・新美南吉は口にする。いや、実際に聞いた人は少なく、彼はいつも子狐の縫いぐるみに話しかける。

「ねぇ、ゴン？」

今日もまた、そのゴンを膝の上にのせ、誰にも見つからないような中庭の一本松の下、会話を始めた。

「僕ね、さっき敵と戦った時思ったの。」

新美は物憂げに、ゴンの頭に自分の顎を乗せた。

「僕は前世で、子供に成りたいと願ったことが、あるんじゃないかって。」

そう思えたのは先程の戦闘で、銃を撃った衝撃の中だった。大人とは身勝手に子供の世界を作り替える。

童話作家の新美にとっては、敵対するとも云えるやもしれない。

「ゴン、君はどう思う？大人になって広い世界を窮屈に見るか、子供になって自由に窮屈な世界を見るか。

どちらが幸せかな？」

いずれにせよ、ゴンは縫いぐるみであるからして返事はしない。

「そっか、それがゴンの答えなんだね・・・」

しかし、新美の心にはゴンの返事が聞こえていた。

「なら、僕もそうかもしれない。」

ゴンの返事は何だったのか、それは分からない。

しかし、きっと新美はモヤモヤとした感情から開放されただろう。この感情こそ、幼少で得られる特別なものではないだろうか？