Love me-7 ページ2
柱時計のホーミーズが３時を告げる。同時にコンコンと小さくドアがノックされた。
『こんにちは，ドーナツ屋「ユーサリ」のAです…お届けに来ました…』
「入れ」
しかし，いつまで経ってもAは入ってこなかった。しびれを切らしたカタクリは乱暴にドアを開ける。
「いつまでそこにいるつもり…だ……」
そこにはいつもと異なる雰囲気のAが立っていた。服は以前，彼女に贈った黒のフレアラインのワンピース。髪には真珠があしらわれたカチューシャ。普段より丁寧にほどこされた化粧。
『あ…えっと，これは…プリンさんとシシィ…今家に居候している』
気づくとカタクリ様の腕の中にいた。突然の出来事で状況が上手くのみ込めない。
『へ？あの！カタクリ様「綺麗だ」
「誰にも見せたくないと思った」
顔を上げると，カタクリ様は眉を下げ困ったように微笑んでいた。
(初めて見た…貴方のそんな表情)
カタクリも自身の行動に驚きを感じていた。彼女の姿を見た瞬間，己の中で独占欲と言う名の獣が牙を剥いた。誰の目にも触れないよう，腕の中に捕らえておきたいと思った。そしておれのものだという印をつけたいと思った。
「もっとよく見せろ」
そう言うと，カタクリ様は私の頬に手を添える。カタクリ様の手が熱いのか，私の顔が熱いのか。この熱がどちらのものなのかわからない。
『ドーナツ，冷めちゃいますよ』
「構わない。今はお前に触れていたい」
額，瞼，頬，唇。触れるだけの口づけから，徐々に熱をはらんだものへと変化していった。頭の奥が甘さで痺れ，理性が溶けていく。
(ああ，お前はどんなお菓子よりも甘いな)
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作者名：佐藤塩 | 作成日時：2019年10月26日 20時
