Twinkle amber candy (ページ19)

今日:27 hit、昨日:0 hit、合計:55,180 hit

死にたくなかったページ19

(主人公side)
ピエロがナイフを振り上げた瞬間，ぎゅっと目をつむった。

(かたくり様ッ！)

あの人の名を心の中で叫ぶ。突如モチモチしたものがあたしの体を掴み，ぐんっと引っ張る。恐る恐る目を開けると，かたくり様の腕の中にいた。見上げると，いつも以上に険しい顔で青筋を立て目の前の相手を睨み付けていた。

「無双ドーナツ “力餅”」

その衝撃で船全体が揺れたような気がした。その後，かたくり様の腕に槍が取り込まれる様子を呆然と見ていた。頭の上から深い溜息が聞こえた。

『かたくり様…あの「なぜ一人で乗り込んだ」

『それは…』

「殺されてもおかしくない状況だったんだぞ！」

(ああ…そうだ。そうなっていたかもしれないんだ)

あのとき偶然，かたくり様が助けに来る未来を視た。しかし，この未来が現実に起こりうるものなのかわからなかった。もし少しでもかたくり様が来るのが遅れていたら，自分は今頃殺されていたかもしれない。

痺れを切らしたカタクリが舌打ちをする。

「わかってるのか！」

『…ごめんなさい』

「ッ…」

『ごめんなさい，かたくり様…心配かけて……怖かった。死にたくなかった』

言葉にした瞬間，次から次へと涙が溢れてくる。

死にたくない。だた，それだけだった。だからこそ，かたくり様が助けに来る未来を信じた。きっとあの人は来てくれる。

大破した部屋に少女の泣きじゃくる声だけが響いていた。