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「遅かったな。」
「...なんでいるの」
私の部屋の前なのに、そこには先客がいた。
修司「1人なんだ。凌さんは?」
「帰ったよ」
修司「へぇ。あの人は送ってくれないんだ。」
「なんなの。何しに来たの?」
修司「そんな怒んなよ。」
あまりに引かない彼を部屋に入れてしまった。
これが間違いだった。
無理矢理にでも追い返せば良かった。
修司「変わってないね。」
「...」
修司「凌さんもここに来たりしたの?」
「...」
修司「ふーん、そこまでいってないんだ。」
人が黙っていれば好き勝手にベラベラと...
「なに?いちいち凌さん凌さんって、何が言いたいの!」
修司「俺さ、凌さん憧れなんだよね。ギターも歌も上手いし、カッコよくて完璧で。でもさ、お前があの人の名前呼ぶのイライラする」
「は?!なにいって...」
修司の強い力で壁に押し付けられた。
痛むほど強い手首を掴む力、鋭い目、近づくその表情は恐怖を感じた。
修司「ウソツキ。」
身体が震えた。突き刺さる言葉に、彼にはもう勝てないと思った。
修司「俺しか愛してないんじゃなかったの?愛せないんじゃないの?」
蘇る記憶。
行かないで。
1人にしないで。
家族も、愛する人も、皆私から離れていく。
悲しかった。寂しかった。
もう誰でもよかった。
そばにいて欲しい。
一夜だけでいい。
そうして私は穢れていった。
修司「勝手に他の野郎ンとこ行ってんじゃねぇよ。」
修司が離れたくせに。私を振ったくせに。
そう思うのに、それでも1度深く愛した元彼を責められない。
何度も繰り返される強引なキスも、自分勝手な彼の欲望も全て受け止めるしかなかった。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時