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『ケータイ。出せ。』


「女の子のケータイ見るなんて趣味悪いですよ。」



『うるせぇ。』



そう言って凌さんは私のケータイに連絡先を登録した。
そういえば、電話番号も知らなかった。



『余計な事でかけてくんなよな。』



「ありがとうございます。毎日暇電します。」



『予定分かったら教えて。なんかあったら連絡する。』



最近じゃ私のふざけた返答にもスルースキルが付いたようだ。




彼に出会って数ヶ月。
今まで全てにおいて何も楽しくないと思っていた私の日々は、凌さんの存在によってだいぶ潤った。


少しだけ彼の事も知った。


私より5つ上の25歳。もっと上だと思っていた。

高校の同級生とバンドを組んで活動している。
楽曲制作は彼がメインでやっているらしい。

そして彼女はいないみたい。納得。


私と凌さんの間に男女の関係が出来ることはなかった。
この私でも、そんな気はサラサラないし、そんなつもりもない。



凌さんの事、好きだけどそれはあくまで人間性。音楽性。


ただ、特に関係も無いならばいつか彼と離れる時が来ると思うと少しだけ切なくなった。



なんやかんや言っても凌さんは私の声を褒めてくれた。
学校を卒業して音楽辞めるのは勿体無いと言われ、私も少しだけその気になりかけている。


ミュージシャンなんて、難しい。



でも、私が追い求めるモノ。
いくら探したって見つからないから。
それなら私が創ってもいいのかな。

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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時

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