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「Aの事が好きなんだ。付き合って欲しい。返事はすぐじゃなくてもいいから。全然、待ってるから。」
そう言うのは仲の良い男友達。
正直、私に向ける態度で少し勘づいてはいた。
真っ直ぐな彼の瞳に映るのは私。
人に好かれる感覚を久しぶりに感じた。
いつも追いかけてばかりだから。
「少し考えさせて欲しい。」
私にとって彼は良い友達で。
人として好きだけれど、恋愛対象として見た事がなかった。
彼には悪いが、私も手のひらで転がせたらな、なんて思ってしまう。
バカだなぁ。
薄汚れた私には、薄汚れた考えしか出来なくなっている。
愛情を向けるのは1人でいい。
快楽の相手は何人いてもいい。
そんな関係になってしまえば、私達は友人には戻れない。
貴方は良い人だから、友達のままでいたいなぁ。
夜のバイトが終わり、普通なら帰宅する所だが、誰も待っていない家になんて帰りたくもない。
とりあえず一瞬帰宅し、ポケットにケータイと財布を突っ込んで、ギターケースを担いですぐに家を出た。
向かったのは男の家でもなく、住宅街から外れた寂れた公園。
遊具もほとんど錆び付いているこの場所は、今の時間は当たり前に人気がなく、昼間でもあまり人が寄り付かない、私にとって居心地がいい。
周りに家やマンションもない。
私が幾ら叫んだって誰にも届かない様なこの場所でギターを掻き鳴らした。
誰にも聞こえない。
誰にも届かない。
誰に向けて、誰のための歌?
私が私の為に歌ってるの。
全て私の為。
私の為に歌って、私の為に弾いて、
私の為に生きてる。
男と寝るのも、私の欲求の為。
元彼を追いかけるのも、私の欲望の為。
何もかも自分の為。
どうして他人の為なんて考えなくちゃいけないの?
みんなそうでしょう?
綺麗事ばかり並べたって
自分が一番可愛いの。
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作者名:なちゅ | 作成日時:2020年4月9日 14時