98 過去話 ページ48
「嘘でしょ？おじさん、さっきお母さんがどうしてるか知らないって言ったじゃん！！」
あれだけ距離をとっていたのに、おじさんのズボンの裾を掴んだ私はすがるようにくっ付く
困ったように頭をかいたおじさんは、私と目線を合わせるように座った
青「お嬢ちゃんがさっき持ってたのはビブルカードだ。」
「ビブル……カード？」
青「うーん、まぁ、なんだ……持ち主がいる方に動く不思議な紙だ。」
おじさんの雑な説明に私は首をかしげる
青「紙が持ち主の場所を教えてくれるんだよ。」
確かに焦げていた紙はずっと勝手に手のひらの上で微かに動いていた
青「同時に持ち主の生命力を表すものでもある。紙が燃えたってことはお嬢ちゃんのお母さんの命が尽きたってことだ。」
ビブルカードについてはよく分からなかったけど、おじさんが嘘をついているようには見えなかった
小さくなって消えてしまった紙が、お母さんの死を表しているなら
お母さんの状況を知らなかったおじさんがお母さんの死を察知するのも納得出来る
黙ったまま俯く私の頭にポンと手を乗せたおじさんは再び立ち上がった
青「悪いけど、おれがしてやれるのはここまでだ。立場ってもんがあるもんでね。」
舟から自転車に乗り移ったおじさんはチラッとこっちを窺い見る
青「まぁ、元気でやりなさい。」
そのまま自転車に乗ったおじさんの背中はすぐに見えなくなってしまった
…お母さんが死んでしまった
おじさんに言われたように髪を切りながら、飲み込めない現実が頭をぐるぐると回る
やっぱり、お母さんは死を覚悟していた
私に振り返った最後の笑顔が、別れの笑顔のように見えたから
「うっ……お母…さん。」
周りに何も見えない海の上
私は声が枯れるまで泣いた
絶望と悲しみしか感じることはなく、声が枯れても1人ずっと泣き続けた
このまま死んでしまいたい
そう思う瞬間もあったけど、そのたびに自由になれと言ったお母さんの言葉を思い出す
未来に希望なんか感じられない絶望の日々
私がゴア王国に漂着する数日前の話だった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 414人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ONEPIECE」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
なち(プロフ) - りなさん» ありがとうございます！面白いと言ってもらえて嬉しいです！頑張ります！^ ^ (2016年5月8日 22時) (
レス) id: c4c4776476 (このIDを非表示/違反報告)
りな - とっても面白く、一気に読ませていただきました！続き、楽しみにしています！ (2016年5月8日 12時) (レス) id: 07f97e4929 (このIDを非表示/違反報告)
なち(プロフ) - みぃさん» ありがとうございます！期待を裏切らないよう頑張ります！！ (2016年5月7日 23時) (レス) id: c4c4776476 (このIDを非表示/違反報告)
みぃ(プロフ) - 読ませていただき、お気に入りにもさせていただきました！！更新、楽しみにしてます！！！！頑張ってください！！！！ (2016年5月7日 19時) (レス) id: b8f07ad897 (このIDを非表示/違反報告)
なち(プロフ) - Hiyoriさん» ありがとうございます！頑張ります^ ^ (2016年5月5日 14時) (レス) id: c4c4776476 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：なち | 作成日時：2016年5月3日 12時
