Bloom…izw ページ4
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三寒四温。昨日寒くて凍えたと思えば、今日はアウターいらずで外を出歩けた。
業務中、煮詰まって買い出しを申し出た13時。
ネイビーのカーディガンに当たる日差しが暖かくて袖をまくる。
朝私は日焼け止めを塗ってない気がするが致し方ない。
ふと視線を上げると青空に映える桜の花が目に入る。
3月頭って桜は咲くんだっけか。
オフィスに戻り頼まれていた物を袋ごと伊沢くんに手渡す。
ありがとう、そうは言うものの私を見ようとしない元クラスメイト兼元彼兼現上司。
とはいえ、付き合っていたのなんて10年以上前でもう友達期間の方が長いんだけど。
『ねぇ、伊沢くん、いま忙しくなかったら頼みたいことがあるんだけど』
「内容によるかな。何？」
伊沢くんが忙しいことなんて分かりきっているのに。
先程外を歩いている時に思ったことを口に出すか今更悩み、黙っているとやっとこちらを向いた伊沢くんは怪訝そうな顔をしていた。そりゃそうだ。
『3月9日か桜の季節ギターで弾いてくれない？』
「それならお安い御用」
いつも置いてあるギターを引っ張り出して簡単にチューニングしたと思えばCコードを鳴らす。
もう10年以上聴いている声で歌い出す伊沢くんに合わせて私も歌う。
オフィス内でオンタイムなこともあるが伊沢くんが急に歌うことに慣れているのか仕事中のメンバーも一瞥しただけで気に留めていないようだ。
どちらかで良かったのに、両方弾いてくれた伊沢くんに合わせて歌いきると少し息が切れてた。
現役時代のように日常的に歌ってないからだろうな。
あの頃は、歌うことがこんなに疲れることだなんて思わなかった。
授業の合間の短い時間でも私が口ずさめば一緒に歌うし、伊沢くんがギターを鳴らせばやっぱり一緒に歌っていた。
「久々だけどAと歌うとやっぱ楽しいわ」
また歌おうぜ。そう言ってギターを仕舞う伊沢くんの少年のような笑顔はあの頃と何も変わらなくて。
あの頃描いた夢とは違う形だけど、こうやって隣同士笑い合えているのなら良いのかもしれない。
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作者名：n | 作成日時：2024年2月6日 18時
