意地悪と意地張り…kwkm ページ8
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コトリ、作業していた俺のPCの傍に物音。
今日もこの時間が来てしまった。
『川上くん、ちょっとは休憩しなね』
そう微笑みながらコーヒーをくれるAさんは優しさの塊。こんなこと言うのはがらじゃないけど女神の様だ。
大好きな、憧れの先輩からの差し入れは嬉しい。ただ、俺はコーヒーが苦手だ。
少し前からコーヒーのハンドドリップにAさんがハマって、毎日コーヒーを淹れてくれる。
理由は簡単。初めて淹れてくれた時に俺が嬉しさの余り絶賛したからだ。
一口啜る、苦い。
砂糖とミルクを湯水のように入れて飲みたい。
しかしAさんの手前、それは出来ない。そんなことをしたら彼女はきっとショックを受ける。
俺に一言、コーヒー苦手なんですと言う度胸があれば。
毎日悔いながらこの苦味と闘っているのだ。
明日こそは伝えようと、毎日決意しながら。
⋆*゚∗
「あれ、Aさん今日も川上に意地悪してんすか?」
『やだなぁ伊沢くん。意地悪なんかじゃないよ』
最近の私の趣味、それはコーヒーを淹れる事ではない。
苦手なコーヒーを、一生懸命飲む新編集長を眺める事だ。
何となしにコーヒーを淹れたくなり、オフィスでやった時に彼は私に気を使って美味しいです、そう褒めてくれた。
コーヒーが苦手なことなんか、皆知ってるのに。
彼は今一体何と闘ってるんだろう。
男としての面子?
それとも、苦味?
あ、また。眉間に皺を寄せて、ほぼ目を閉じてチビチビ飲んでいる。
そのペースじゃ飲み終わるまでに1時間はかかっちゃうよ。
『川上くん、コーヒー、美味しくない?』
あまりに可愛いからそう尋ねたら
「い、え。今日も美味しいですAさん」
だって。引き攣った顔を隠しきれていない。
これはしばらく辞められそうにないな。
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n(プロフ) - 葉華さん» 葉華様✳︎コメント頂きありがとうございます!とっても嬉しいです!また楽しんで頂けるようなお話を紡げたらと思いますので良かったら見にきて下さい❤︎ (1月22日 22時) (レス) id: 32f17af958 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - どれも素敵な作品でキュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございます。 (1月19日 5時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:n | 作成日時:2020年4月22日 21時