自由落下中…fkr ページ38
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カラカラ、小さな星の塊が硝子の中に重なっていくとそんな音が聞こえてきそうだ。
やらなくてはならないことはデスクの上に山積みになっているのに、手をつける気力が起きなくてつい砂時計に魅入る。
在宅ワークを愛しているものの、こういうやる気が起きない時にそれを見張る人がいない事に困ることは多い。ついやる気が削がれて先送りにして、何とかその日中にと夜日付が変わる直前まで仕事をしてしまう。
「あれ、Aサボってるの?」
寝ていたはずの拳に声をかけられて肩が跳ねる。
この同棲してる恋人は、明け方まで仕事を詰めていたと言って今朝帰ってきて今晩の動画の収録まで休むとついさっきベッドに入った。はずだった。
『拳、寝てると思った』
「寝ようと思ってたけど、何となくAと居たくなって」
仕事の邪魔になるかな?って思ったけどキーボードの音はしないから覗きに来た。そう言って私の横に自分の椅子を持ってきて腰掛ける。
疲れてる時程私に甘えようとする拳。私の肩に顎を乗せて、身体をもたれかけてくる辺り相当疲れているんだろう。寝られるなら寝て欲しい所だけど、甘えてくる拳が可愛くて拒めない。
「急ぎの仕事?」
『今日中のは何個かあるけど、昼過ぎに初めても間に合う位だよ』
「じゃあ、良いよね」
そう言うと先までの甘えた緩い拳の雰囲気が急にピリと張り、拳の鼻先が私の首筋を撫でる。
『流石にそれは、仕事中は』
「でもAが今欲しい」
身を捩らせると足がデスクに当たり、さっきまで見ていた砂時計が倒れる。
そのごとり、という音がスタートのゴングのようだった。
沢山甘やかして、甘えられて、背徳感と罪悪感でごちゃ混ぜになりつつも止められない私はやっぱり在宅ワークじゃないとダメかもしれない。
拳に包まれてベッドにダイブした私はもう無抵抗だった。
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n(プロフ) - 葉華さん» 葉華様✳︎コメント頂きありがとうございます!とっても嬉しいです!また楽しんで頂けるようなお話を紡げたらと思いますので良かったら見にきて下さい❤︎ (1月22日 22時) (レス) id: 32f17af958 (このIDを非表示/違反報告)
葉華(プロフ) - どれも素敵な作品でキュンキュンしました!素敵な作品をありがとうございます。 (1月19日 5時) (レス) id: 799c11267c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:n | 作成日時:2020年4月22日 21時