からかい上手の幼馴染み【越前リョーマ】

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1ゲーム、1ゲーム、1ゲーム、1ゲーム。

面白いように増える奪取ゲーム数。
残すはあと1ゲームだけ。

私の頭は沸いていた。


熱い....熱いよ。
ねぇもっと、ちょうだい。
ほら、1ゲームとって見せてくださいよ。

こんなんじゃ一方的でしょう。
つまんないでしょう、ねぇ先輩！！！！

ポンポン沸き出る衝動。
脳みそが今までにないくらい元気だ。

でも反対に、その熱でクラクラする。


また、二球目でスマッシュを放つ。

ネット際で待機して、返されたボールをまたスマッシュ。

スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、
スマッシュ、スマッシュ、スマッシュ、
スマッシュ、スマッシュ。


汗ダクで、息も荒い先輩達。
プライドも自尊心も、もうボロボロでしょうね。

でももう、容赦しませんよ。
だって私、今こんなに楽しいんですもの。

スマッシュが、
先輩方のコートに深く突き刺さる。



.........取ってよ。



ポツリとそう思い浮かんで、
試合が終わった。


ネットを挟んで握手と挨拶。

「お前すげぇな、A！！
とんでもねぇ、とんでもねぇよ！！！ね、タカさん」

「ああ。
あんな速攻見たことないよ。
貴重な経験をありがとう、高橋」

私とリョーマ君と強い握手を交わした先輩方は
楽しそうに笑っていた。


.......なんで...？


ふとそう思った。

なんで楽しそうなんですか？
私は満足してないんですよ？
なんで、アンタ達は…。


その真実に、苛立った。


「なんで……」

でも、
溢れ出た感情は怒りじゃなくて
言い様のない悲しさで、

ポロポロと滴が落ちていく。

「なんで……！」

ギュッとラケットを握り締める。
手も肩も唇も全部震えた。


「なにしてんの」

不意に肩を叩かれて、
顔を向けると頬に君の指が当たる。

「リョ、マ…君」

「勝ったのに嫌な顔するね」


言葉を聞いてカッとなる。

「…私は……！」

「俺も嫌だったんだけど」

「え……」

思いがけない言葉に虚を突かれる。

「ダブルスなのに、一人で戦われて」

ハッとする。

そう、私は一人でやってたんだ。
せっかくのダブルスなのに。

「息あがってんのにスマッシュ打ちまくって、
それで勝って楽しいわけ」


「いつものお前の方が、楽しそうにやってたよ。
…全力ではなかったみたいだけど。

さっきスマッシュ打ってたお前より、
いつもの小賢しく回転かけてるお前の方が」

チクリ、胸が痛んだ。

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