そのバーテンダー、猫かぶりにつき【2j3j/男主】

その後の話：剣持と水雲 ページ42

「そろそろ機嫌直してくれません？」

『は？別に悪くありませんけど』

「全然怒ってますって」


目の前で機嫌を直せと何度も言ってくる目の前の男は、最近にじさんじ内外でも少し世間を騒がせた水雲A。
何度もオフで会ったりしているのに素のAさんに気づけなかったなんて。


『話し方』

「はい？」

『その話し方、やめる気ないですか』

「……ヤなの？」


話し方を崩したAさんが僕の顔を覗き込んでくる。
整ったその顔面とまっすぐに僕を見る瞳に耐え切れず、背けてしまっている自分が嫌になる。
別にもう何度だって見ているはずなのに。


『別に』

「じゃあこのままでいいですね」

『なんでだよ！』


思いのほか大きかったらしい自分の声が部屋に反響する。


「ふっｗ自分の声に驚いてんじゃねぇって」

『驚いてなんて、』

「刀也くん」

『…なんですか』

「素、見せたくなかったわけじゃねぇから」


心のどこかで引っかかっていた部分に、スッと触れてくれるAさん。
どこまで出来る男なんだよ、というツッコミは心の中で。


『たまに』

「ん？」

『たまにアレって思うときもあって』

「え、マジ？」

『でも本当にたまにだったんで勘違いだろうって思うようにしてて』

「ん」

『でも勘違いじゃなかったんですよね』


僕の言葉に相槌を打ちながらちゃんと待ってくれるAさんに大人の余裕ってやつを感じつつ思っていたことを吐き出す。
別に、本当に些細なこと過ぎて、言わなくてもいいんじゃないかって口を開いている今だって思う。
思うのに、次々と飛び出す言葉に自身の制御が追い付かなくなる。


『僕は、値しなかったですか？結構、これでも一緒に過ごした時間は長かったって、自負してるんですけど。Aさんにとって僕は』

「一緒に居る時別に無理してなかったぞ」

『でもっ』

「え、なに？刀也くんって実はけっこう俺のこと好き…？」

『…は？』

「メンヘラ彼女みたいなこと言ってるからそうなのかなって」

『はぁ？？？キモイこと言わないでもらっていいですか！？』


楽しそうに話すAさんは僕を指差しながらニコニコと笑っているので、言われたことをもう一度頭の中で整理して…


『なんか馬鹿らしくなりました』

「お？」

『一緒に居る時無理してなかったんですよね、ならいいです。僕は寛大なので許してあげますよ』

「んはｗ許されたので今夜はカレーでお願いしますね」

『…誰が作るんですか』

「刀也(・・)でしょ」


見慣れない、子供みたいに笑ったAさんに免じて、仕方ないから今夜はカレーです。


　

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