知らない話 ページ6
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s.w
「私とAは、同じ孤児院育ちなの」
前に座る記者がそう言った。
ああ、じゃああの記事はやっぱり。
記事の内容を思い出す。
__母親からの虐待を受けていた。
__父は彼女が産まれてすぐに事故により他界。
__そこから母親のネ グ レ ク トが始まったという。
__夜の街に沼る母親。
__ホストに有り金全部を使ってしまい、生活費もなく、夜遊びもできず狂いそうになった時に彼女は思った。
__ああ、あいつがいるわ。
__父親譲りの可愛いルックス。良かった、し んでなくて。
__自分の娘を芸能界に放り込み、どんどん稼ぐように命じた。
__子どもだったAは嬉しかった。自分が頑張れば母親が喜んでくれるから。
__愛されてる、って思うことが出来た。
__でも子役にはピークがある。仕事が取れなくなると、また母親は彼女に暴力を振るう。見えないところに、心に、傷を作っていく。
「ある日、家の前で倒れている所を、近所の人に救われた。」
「その人が児童相談所に電話して、私のいた孤児院に来たのよ。」
「彼女の空白の2年間。あの時期にあった出来事はこのことよ。」
ああ、確かにあった。
空白の2年間。
メディアに一切出なかった彼女が、2年後に何も無かったかのようにまた出てきて、見ない日はないなって思うくらいになっていた。
だから、忘れていた。空白の2年のことなんて。
「なんで、そんな話俺達には何も、、してくれなかった」
「教えてくれても良かったのに、」
「そんな暗い話、メンバーの貴方達にしたくないでしょう」
「いや、メンバーだからこそ教えて欲しかったです。家族みたいな物なんだから、」
「何言ってるのよ」
「え、」
「メンバーだから、でしょう。あの子が言えなかったのは。」
「だから、」
「大好きな、貴方達だからこそ言いたくなかったのよ！なんで分かってくれないのよ！！！！！」
急に声を荒らげた記者に、思わず怖気づく。
「Aが、どれだけ苦しんだか。」
「貴方達には一生分からないでしょうね。」
「もう話すことはありません。お帰りください。」
「ちょっと！待って！！」
「まだ話が！」
制止も聞かず、去っていった記者。もとい、山田尚子さん。
.
続く
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作者名：nanase:) | 作成日時：2023年6月15日 1時
