5品目 ページ6
Side Aｰ職場 フロアにてｰ
フロアへの扉の前に、スーツを着た男性が見える
[ホテル 劉優ｰりゅうゆうｰ]の支配人、笹原 瑛人(ｻｻﾊﾗ ﾃﾙﾋﾄ)だ
笹原「Aさん、行けますか？」
少し上がった息を悟られないように、はいっ、と短く答える
すると彼は細く微笑み、私の方に手を置いた
笹原「息が整ってから、そう言いましょう」
『っ、すみません...』
置かれた手に異様な冷たさを覚え、少し足が竦んだ
この人は、言わば力ある人だ
人を支配する力。束ねあげる力。人を選び、見抜く力。
そんな彼が厨房へ寄越す人達はやはり優れていて、志帆も例外ではない
しかしそのせいで、皆の中に常時危機感がある
[他者より優れていなければ]
[もっと周りより出来なければ][然もなくば ここから捨てられる]
それらは決して良い危機感では無かった
志帆も何度か、怯えた表情で訴えかけてきた
「私、消されるかもしれん」
そんなこと、絶対にさせない...
笹原「もう大丈夫そうですね。行きますよ？」
『ぁ、はいっ』
ザワつくフロアに、場違いな雰囲気を纏わせながら歩く支配人
問題のお客様もそれを悟ったようで、楽しそうな表情を浮かべた
こういう人間は、私は大嫌いだ
自分が楽しむ為だけに周りを巻き込む
一度覚えた感覚はいずれ麻痺し、さらに刺激を求め事を大きくする
「あんたがここの支配人か？随分ガキだなぁ」
笹原「それは嬉しいお言葉です。
早速ですが、お引き取り願えますでしょうか」
周りのお客様は目を見開いた
そりゃあそうだ
苛立っている人間を目前に
謝罪の言葉もなしに帰れと言っているのだから
「あぁ？！俺はここの客だぞ？客に対する態度か？！」
案の定クレーマーは声を荒らげた
遠くで赤子の泣き声が聞こえてくる
恐らく今の恐喝に脅えてしまったのだろう
しかしそんなことを気にも留めぬ様子で彼は続ける
笹原「おや、お客様でしたか
てっきり自己満足の為に周りを巻き込むトラブルメーカーかと…
お客様でしたら、最低限のマナーは守れますよね？」
どこか黒い含み笑いを浮かべる彼。
クレーマーは額に汗を滲ませながら
反論できなくなったからか拳を振り上げた
「調子にのんな！！くそがきがっ！」
『それはこちらの台詞です』
彼の影でやり取りを見ていた私
私が駆り出されたのは、この為だ
暴力に走る人間を"力"で抑え込む
支配人に怪我を負わせぬよう、盾となるのだ
それがここの、料理長と副料理長が在るべき理由だから...
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Rey(プロフ) - この作品神ですね。とても面白いです！更新されているぶん全部読ませていただきました！キュンとするところもあれば、切なく感じるところもあり、それでいて面白いという。一目惚れしました←更新頑張ってください！待ってます！ (2017年12月10日 9時) (
レス) id: 71cc7404f6 (このIDを非表示/違反報告)
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