30品目 ページ31
side 志帆ーダイニングにてー
あー…聞こえちゃった
あんま聞きとーなかった他人の会話
しかもそれが職場の上司兼親友の好きな人ときた
シホ「めんどっ...」
うちの両端に座る96ねぇと志貴兄ぃに聞こえないように呟く
溜息混じりに吐き出されたそれは誰に汲み取られるわけでもなくて…
皆の皿が空っぽになったんを確認して再びキッチンへ
冷蔵庫から取り出したのは、ババロア液が入った容器
形が崩れん様に丁寧に1個ずつ取り出していく
『よし、これ運んじゃうね』
何故か嬉しそうに、皿に盛り付けられたババロアを運ぶA
お盆には人数分-1のババロアが
サカ「!デザート!」
シマ「おぉwこれ昨日食ったwww」
シホ「ほんなら兄ぃはいらへんな」
シマ「ちょちょちょ!!俺も食ぅて!」
ったく、つべこべ言わず食えばええんにから...
なんて思いながら、皆の中に混じるAを見つめる
シホ(ほんま、明るくなったな)
そう思うと自然と笑みが零れる
出会った頃のAと比べたら、格段に人間らしゅーなった
まぁ、この話は別に、な?
96「んまぁ…わしこれ好きやわぁ」
ウラ「うん、うまい」
口々にそう零す中、未だに何も言わないA
理由は、わかってる。
料理人で、しかも上に立つ人間が美味いと言えば
周りはそれに影響されて美味いって思う傾向があるから
…分かっとっても、上司に認められへんのは辛い
同じ所で学んで、同じ所で働いて…
それなんになんでこうも差が出てくるんやろ
何回も思った
セン「これ、美味いなぁ。Aが作ったん?」
不意にセンラさんがそう言った
ちゃう。作ったんは、ウチや
そう思っても言い出せへんくって、腕を組んで唇を噛んだ
ウチの中にあるんは醜い感情
『ふふっ、美味しいでしょ?当店自慢の志帆が作ってますから』
違う ウチは店の"モノ"じゃない
ウチは、麻野志帆っちゅー人間
友達やけど 仕事仲間やけど 上司やけど...
それ以前に……!!!
ウラ「へぇ、お前凄いんだな」
どす黒く渦巻いた心ん中に ストンと落ちてきた言葉
間違いなくウチに向けれた言葉で
今まで何回も同じ言葉を投げられたはずなんに
何故かその人のは真っ直ぐに落ちてきた
それと同時に口内に広がる鉄臭さ
ウラ「おま、唇切れてんぞ」
シマ「?!ちょちょい!なんしてん、もー」
あぁ、噛み過ぎたんやな
なんで呑気なこと思っとると、目の前に差し出される
水を含んだティッシュ
ウラ「おら、当てときゃ少しは変わるだろ」
…ほんま、この人は...
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Rey(プロフ) - この作品神ですね。とても面白いです!更新されているぶん全部読ませていただきました!キュンとするところもあれば、切なく感じるところもあり、それでいて面白いという。一目惚れしました←更新頑張ってください!待ってます! (2017年12月10日 9時) (レス) id: 71cc7404f6 (このIDを非表示/違反報告)
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