ひとつの幸運。 (ページ26)

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-ジョンハンside-

Aちゃんの弱音を、この日初めて聞いた気がする。

職を失って、家も失って。そんな時でも笑ってた彼女の声が震えているのに、ただ抱きしめてあげることしかできない。

『ジョンハンさん…服にマスカラついてしまいます』

jh「せっかく見ないふりしてあげたのにー」

俺の腕の中で、今日は小さく見えるAちゃんが少し笑った。

jh「…俺は気の利いた言葉をかけてあげれるような人間じゃないけどさ、辛い時は辛い、泣きたい時は泣く。

これでいんだよ。

今はミンギュだけじゃなくてシュアもスングァンもいるし、ほかのメンバーだっている。

実際こうして俺にも話してくれたじゃん。

そうやって受け止めてくれる人は周りにたくさんいるんだから、一人で乗り越えようとしないで。吐き出すだけでも吐き出して。分かった？」

『はい…ほんとに、ありがとうございます』

涙をふいて、俺の体からゆっくり離れた彼女は

『ジョンハンさん』

jh「ん？」

『泣いてスッキリしたら、お腹すきました』

って、いつもの笑顔で笑う。

俺と話す時にいつも「ジョンハンさん」から始まるところも、
こういう話のあとにこんなことを言うところも、

どうしようもなく愛おしくなった。

jh「今日はなーんでも好きな物頼んであげる」

『ジャージャー麺！！』

スングァナ、ごめん。

あんなに余裕ぶって今の距離でいいなんて言ったけど、そんなの嘘だったかもしれない。

結局こうやって欲が出るんだね、人を好きになるって。