朝日が上がるその前に (ページ4)

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トランクを持って。
片手に箒を持って。

「チトセ王子、今まで、ありがとうございました。」

チトセ王子に深く頭を下げた。
まだ幼い顔立ちに私と同じくらいの背丈。
青い瞳に青い髪。
この王子は正統な王の子という印を持っている。

「カレン、どこに行くのか？」

「私は婚約者がおりますのでそちらに」

旅の格好をし、彼を見つめる。
ああ、出会った時はあんなに小さかったのに。

「そうか…」

「はい」

「嘘つけ」

ニッとチトセ王子は悪戯っ子のように笑った。

「カレンは嘘つく時、目をそらすよな」

「えっ！？」

「ほら」

チトセ王子は私の瞳をみる。
やっぱり小さい時から一緒にいるからわかってしまうのだろうか。
確かに婚約者は嘘だ。

「何の目的だ？俺の世話役なのに途中で逃げ出すとはね」

「お許し下さい！私は…」

チトセ王子は私の髪の毛をさわった。
悲しそうな瞳で私をみた。

「俺も行く」

「はぁ？」

「夏休みだし。お前に付いてく」

この王子は何を言っているのだろうか。
頭を打ったのではないか。

「何言って…」

「俺は、お前のことが…！」

「チトセ王子？」

私はわざとその言葉を遮った。
笑顔で誤魔化しながら。

「とっとりあえず、お前はここで待ってろ！」