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次に意識が戻ってきたんは、腹の虫がいよいよ本格的に鳴き始めたからやった。
「はら、減ったぁ…」
食物を求めてキッチンに降りてみるも、そこには昼間にうまく温められもせんかった鍋だけで、あとは冷蔵庫にヒナの作り置いた茹でた野菜なんかがタッパーに几帳面に詰められとるだけやった。スナック菓子の1つもありゃとも思うけど、この歳になってそんなもんもよう食わん。元より俺の腹はヒナの手料理以外じゃろくに満たされもせんのや。
誤魔化しにペットボトルのコーヒーを出して、マグを出すのも面倒でそのまま口をつけた。ヒナがおったら叱られるんやろうな。あいつは俺のことずっと子どもや思うてんねん。俺はもう大人になって、この先を考えなあかん歳になってんのに。オカンが俺を産んだ歳なんかとうに超えとんのに。
腹が減って進まへん仕事は諦めて、テレビでも見ようとリビングに向かう。デッキは、まだ点滅していた。
「いつまで待たせんねん…」
時計の針は短い方が7に掛かろうとしている。
「はよ、せぇよ」
その言葉は何に向けたものだったか。誰に向けたものだったか。ヒナは何時に帰ってくると言っていたのだったか。
襖に寄っかかってペットボトルに口をつける。苦味がじんわりと口の中に広がった。ヒナが入れるコーヒーほど美味くない。
あぁ、ヒナのことばっかりや。俺は、ヒナがいないとなにもできない。
また腹の虫が鳴いて目を閉じた。ヒナは何時に帰ると言ったのだったか。もう一度考えてみるけどわからない。なにも言っていなかったかもしれない。けどいつもなら夕飯の時間までには帰ってくるのだ。定期のメンテナンスに行くたびに、その時間が長くなっていることにくらいとっくに気づいている。
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ぐりむ(プロフ) - ↓全くコメントに気がつかなくて一年以上経ってしまいました。すみません。一応お返事しておくと、めちゃくちゃダメです。重ね重ねすみません。 (2020年1月4日 1時) (レス) id: 212d40df9c (このIDを非表示/違反報告)
岩辺亮香 - 作品、アレンジしてもいいですか?よければ私が作ったイベントに参加してください! (2018年12月27日 7時) (レス) id: d0c4305158 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぐりむ | 作成日時:2017年5月14日 9時