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帰り道スーパーによって晩御飯のおかずを買うこと。明日の朝ごはんの献立を考えること。その時、すばるくんはなにが好きやったかなと思うこと。当たり前のように切り身が二切れ入ったパックを選ぶこと。やっぱり幸せは、そんなことの1つ1つや。手に入るはずのなかった幸せが当たり前のように訪れることに怖がる自分。


2人分の食材を両手に提げて家に帰ると、すばるくんはリビングのソファーに寝そべって窓の外を見ていた。

「すばるくん、ただいま」

後ろから声をかければ緩慢な動作で振り返る。

「おぅ、おかえり」

「どうしたん?」

「…ん?」

「体調でも、悪いん?」

焦点の合わない瞳を伏せて、すばるくんは首の後ろに手を当てた。体調が悪い時の癖。人形にもそんなことがあるんやろうか。

「ん、いや…」

夕暮れの西日が部屋の中へ差していた。すばるくんの胸のあたりがぼんやりと赤く光って、俺は、あの頃のことを思い出す。

「暇やなぁ、思て」

そう低く囁く。
あの頃のすばるくんは、そんな声ばっかりやった。寂しい声や。哀しく響く。それが嫌で、俺は歌をねだったんやったか。歌う時だけはすばるくん、生きた声をしとったから。

「あ、あぁごめんなぁ。僕が仕事しとる間、家で一人やもんね。なんか暇つぶしになるもん買うてこよか」

それが怖くて、無理に明るい声を出した。わざと勢いよくおいたスーパーの袋が机の上でガサリと音を立てる。

けど、すばるくんの様子は変わらんかった。

「や、ちゃうねん。なんや…大事なこと、忘れとる気ぃして。忘れたら、あかんこと」

訥々と語る小さな声。すばるくんは、話をするのは得意やなかった。
手のひらが光る胸元に当てられる。

「ここ、空っぽみたいな気ぃすんねん…」

そして、そのまま、
淡い西日の中にそのまま、その小さな身体が消えてしまうような気がした。溶けてしまうような気がした。またあの日みたいにいなくなってしまうのか、こんなに必死に、繫ぎとめてるのに。

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ぐりむ(プロフ) - ↓全くコメントに気がつかなくて一年以上経ってしまいました。すみません。一応お返事しておくと、めちゃくちゃダメです。重ね重ねすみません。 (2020年1月4日 1時) (レス) id: 212d40df9c (このIDを非表示/違反報告)
岩辺亮香 - 作品、アレンジしてもいいですか?よければ私が作ったイベントに参加してください! (2018年12月27日 7時) (レス) id: d0c4305158 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぐりむ | 作成日時:2017年5月14日 9時

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