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人形師さんのとこから家までは電車に揺られて30分。そこから歩いて20分。うちは駅が少し遠い。平日の昼間とはいえ電車は少し混んでいて、席はバラバラに幾つかあいとるくらいやった。たまたま空いた端の席にすばるくんを座らせて俺はその正面に立つ。
「すばるくん、眠かったら寝とってええよ」
声をかけると、すばるくんはいつもの不機嫌そうな顔でしぱしぱと目を二度瞬かせてこっくりと頷いた。力の抜けた肩が前向きに丸まる。
俺はこの俗称は嫌いやねんけどさ。そう前置きして、八重歯の人形師は言うた。
『“人形”には“人形”の自覚はないねん。“人形”にはできる限り「記憶」をもたせとるし、俺は自分の仕事はある種の蘇生やと思うてるから。こいつらは身体こそ機械やけど、持ってる記憶は生きてる時のものやし、まさか自分が機械人間やなんて思うてないからな。ちゃんと“ずっと生きとった”ことにして接さなあかんで』
やけに注意事項の多い人やった。几帳面な人なんは机の上の片付き具合でいくらかわかっちゃおったけど。
『けど、前にも言うたようにそれがどこまでうまく融合しとるかはみてのお楽しみやからなぁ…死んだ時の記憶が色濃いやつは生き返った！いうて騒ぎ出すんもおるし、過去には自分が死んどることに気づいて自分で身体ぶっ壊したんもおんねん。立ち上げた時は平気でもなんかのきっかけで思い出すんもおるし。そこについては責任持てへんけど』
電車がガタガタ揺れている。すばるくんは目を閉じたまま。隣に座るお姉さんは、スマホに夢中なのを置いといたってすばるくんがほんまは人間やないことに気づく様子もなく。
『とにかく、言われた通りのカスタマイズはしとるよ。うまくいっとるとええね』
そう言って、人形師さんは八重歯を見せて笑った。
最寄りの駅からの20分は、そないお金もかからへんからタクシーに乗った。ずっと眠たそうにぼんやりしていたすばるくんは、家が近づくとなんや懐かしい気がするわ…と小さく呟いた。いまにも崩れそうなボロいアパートの隣。二階建ての赤い屋根が俺の家。
「すばるくん」
呼べば振り返る小さい背中は
「…なに？」
相変わらず儚くて、不安だ。
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ぐりむ(プロフ) - ↓全くコメントに気がつかなくて一年以上経ってしまいました。すみません。一応お返事しておくと、めちゃくちゃダメです。重ね重ねすみません。 (2020年1月4日 1時) (
レス) id: 212d40df9c (このIDを非表示/違反報告)
岩辺亮香 - 作品、アレンジしてもいいですか？よければ私が作ったイベントに参加してください！ (2018年12月27日 7時) (レス) id: d0c4305158 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぐりむ | 作成日時：2017年5月14日 9時
