華やぐ刻 (ページ29)

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なんとなく潤に会うのに気持ちが乗らなくて。

にのと相葉くんの話を聞いた日に見上げた時、
明かりの付いていた潤の部屋に寄らなかった時から、

なんとなく。
ほんとになんとなくなんだけど、普通に自分の部屋に帰る日が続いた。

【翔さんおかえりなさい。明日は休みだから、翔さんのリクエストにお答えするよ？何がいい？】

うーん…
うーーーーん…

と悩んでいたら、
既読で半日経ってしまってた。
カフスは、これも悩んだけど外してはいない。
うちの目敏い二宮に何かしら言われるのが目に見えるから。

【仕事忙しいのかな。今夜は翔さんとこ行きたかったけど、いい？】

…会いたい気持ちと、胸のもやもやと。

でも。会って話さないときっともやもやは消えないし、
会いたい気持ちだって本当だし。

【いいよ、入ってて】

ようやくそれだけ打って、仕事に戻る。

「あ、翔さんごめん！！！」
案外早く終わって、7時。
経理は締め作業で残業決定のようで、まだパソコン前から離れられないらしい二宮に呼び止められる。

「今日スマホ落したら壊れちゃってさ！修理行く暇無かったから、相葉さんにこれ渡しに行って貰えない？」
渡されたのは、キーケース。
「今夜届く荷物があって、受け取っといてって言おうと思ってたんだけど、合鍵とか渡してなくてさ」
いつもお世話になっているから、
ここは大人しく、お使いを頼まれてあげることにした。

「あ、翔ちゃんこんばんは！」
夜でも明るい相葉くんが、スッとよってきてくれる。
「にのが今日残業なんだけど、これ使って部屋で荷物受け取っといてって。おれお使い」
俺の言葉に、嬉しそうにキーケースを受けとる。

「にのが？ほんと？」
「ほんとほんと」
「この前合鍵ほしいっていったら、まだって断られたんだ。でも、このキーケースは見せてくれてね。『これに鍵つけて渡したら、手段はどうあれあなたのものだから』っていってたんだー。もう、恥ずかしがりやなんだから」

…よくわからないうちに、キューピット役をさせられていたらしい。
幸せなのはいいことだ。

「あ、せっかく来たんだし、久しぶりに店も見ていって？そのカフスとかのコーナーもご案内しますよ」
キーケースは大事そうにしまい、店員の顔になって、促される。
いいよとは言いづらくて、
「じゃあちょっとみてみようかな」
とかいってみる。
そんな見たいわけでもないのに。

「ゆっくりどうぞ？」
案内されたガラスケースの中。
品の良い小物が並んでいる。