【碧】Yuto.N (ページ6)

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お姉ちゃんが帰ってからは
また代わりに抱かれる日々が続いて

早いもので、あっという間に夏になった。

高校3年生の夏

進路を真剣に決める時期。

『えっ？あの … 』

担任から突然の呼び出しを食らい
勧められた資料を手にしたままフリーズ。

『 … ちょっと、考えます』

職員室のドアを背に
手元の資料に視線を落とす。

見れば見るほど受験生だと言うことを
自覚してしまう。

溜息を零しながら鞄に資料を突っ込むと
雄登の声が私を呼んだ。

「教室行ったらいないからびっくりした」

『ごめんね、呼び出されてて』

「呼び出し？珍しいね」

帰り道、歩きながら雄登と話しているけれど
私の頭は進路のことでいっぱいだった。

「何か … 今日おかしくない？」

『へ？』

「考え事？」

『え … あ、まあね』

考えすぎてボーッとしすぎたかも知れない

気づけば雄登に顔を覗くように見られていた。

「何か悩んでるの？」

『 … 悩みなんて無いよ』

「そうは見えないんだけど」

『ちょっとお腹痛いだけだから大丈夫』

何となく雄登にはまだ話せなくて
咄嗟に嘘をついた。

「 … 本当？」

『うん、でも全然大したこと無いから』

納得いかない顔をしながらも
渋々、私の嘘を信じてくれたようで

いつもは私の部屋に来るものの
今日は静かに自分の家に帰って行った。

『ただいま』

共働きの親は家を空ける事が昔から多かった、

お姉ちゃんもいなくて
久しぶりに雄登も来てないこの家は
あまりに静かで嫌になるくらいだ。

リビングのソファーにだらしなく座り込み
鞄から先程の資料を出す。

『ニューヨークか …』

担任に勧められたニューヨークの大学、

英語が得意で語学の勉強をしたいと思っていたから
興味はあるし挑戦して頑張ってみたいとも思う。

だけど ……

『ニューヨークに行ったら雄登と離れちゃうな』

どうしても雄登のことが引っかかって。

『 … どうしよう』

" 私は雄登のことが好きだから離れない "

やっぱり、あんなこと ……
言うべきじゃなかったんだ。

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