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..
『 …… 』
「 ね 、遅すぎるって何?」
カフェラテを片手に聞くと最初こそは
口を固く結んでいたが諦めたのか口を開いた 。
『 それは 、今だから言える事だけど … 』
「 うん 」
『 その … 昔 、好きだったから … 雄登のこと 』
小さく早口で言った言葉の数々を
すぐに理解した 。
目の前の彼女は
恥ずかしそうに顔を赤らめている 。
『 でも 、今は優斗がいるから 」
「 だから遅すぎるの?」
控えめに頷き 、左手薬指のリングを見つめるAに
どうしようもない気持ちになる 。
「 このままあの人と結婚するの?」
『 うん 』
「 それで幸せになれるの?」
『 … なるよ 』
「 じゃあ何で幸せそうな顔してないの?」
『 …… 』
こういう時 、黙っちゃう癖 。
あの人は知ってる?
「 …… 好きだよ 」
『 雄登 、』
「 好きだから俺から離れないで 」
『 … 駄目だよ 、私達間違ってたんだよ 』
首を振って席を立つ彼女 。
『 どうか無かった事にして … 忘れて … 』
伝票を手に取り
座ったままの俺の隣を過ぎて行った 。
動けないままの俺に
カランコロンと心地の良い音が届いて
Aが店を出たとわかり
急いで喫茶店を出ると大雨が降っていた 。
「 傘持ってねーよ … 」
Aも傘を持っていなかったはずだと
周りを見渡すと少し向こうで
タクシーに乗り込む彼女の姿が見えた 。
そこから気付けば横なぐりになってきた雨の中 、
走り出すタクシーを傘も持たずに走って追いかける俺
周りから見ればさぞかし滑稽だろう 。
「 待って!行かないで!」
叫んでも届かない声 。
足の速さには自信があったつもり 。
だけどAを乗せたタクシーが水しぶきを上げ
遠ざかって行った 。
「 …… 本当に遅すぎたんだな 、ははっ 」
..
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めろんぱん(プロフ) - このお話が大好きで完結後も定期的に読みにきます( ; ; )みるるんさんの作品大好きなのでこれからも応援してます! (2020年7月13日 4時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるるん | 作成日時:2019年6月16日 2時