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お姉ちゃんは同棲の報告後 、すぐ家を出て行った 。
『 ああっ … 雄登っ … 』
「 声 、出さないで 」
『 … んんー …… 』
「 はあ … 姉ちゃん 」
間違いだとはわかりながらも
合意の上で肌を重ねている私はお姉ちゃんの代わり 。
お姉ちゃんが家を出てから
もう何度肌を重ねてきたか 、わからない
私が声を出さないように顔に枕を押し付けて
お姉ちゃんのことを想いながら抱き締められる 。
" 私は雄登のことが好きだから離れない "
その私の言葉を雄登は間に受けただけで
そんな彼の全てを受け入れてしまった私に
傷つく権利など無い 。
「 今日もごめん 」
事が終わると罪悪感からか必ず謝る雄登 。
謝罪を入れられる度に被害者にでもなったようで
私はこの時間がいつも嫌で仕方がない 。
『 いい加減に謝らないでよ 』
「 うん …… 痛くなかった?」
『 大丈夫だよ 』
痛ければどれほど良かったか ……
毎回優しく割れ物を扱うかのように
私を抱き締めるから私が愛されている錯覚に
陥りそうになるけれど
私が必死に声を我慢し 、目の前にある枕の隙間から
空気を吸い込む度に現実が突き刺さる 。
雄登がお姉ちゃんを想うから 、
私はお姉ちゃんの代わりだから優しく抱かれているんだ
頭の中で自分に言い聞かせている 。
『 … 汗拭く?』
「 あ 、うん 」
差し出したボディーシートを受け取り
汗を拭く雄登の横顔は何処か儚く見えた 。
『 … 来週お姉ちゃん帰って来るみたいだよ 』
「 え?本当?」
『 うん 、昨日連絡来てたの思い出した 』
狡いのだろうけどお姉ちゃんの名前を出さないと
私と雄登の目が合うことは無いから 。
「 家出てから初めてじゃない?帰って来るの 」
『 うん 』
「 何で帰って来るの?」
『 夏用のパジャマ取りに帰るってさ 』
「 姉ちゃんらしい理由だなー 」
制服のシャツに腕を通して嬉しそうに笑う雄登から
私は静かに目を逸すことしか出来なかった 。
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めろんぱん(プロフ) - このお話が大好きで完結後も定期的に読みにきます( ; ; )みるるんさんの作品大好きなのでこれからも応援してます! (2020年7月13日 4時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるるん | 作成日時:2019年6月16日 2時