【碧】Yuto.N (ページ17)

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部屋を静かに出て行った雄登の背中を
私はぼーっと見つめるしか出来なくて。

その後、雄登の姿を見ることも無く卒業した。

『ありがとう、行って来るね』

遂にニューヨークへ発つ日。

お母さんとお父さんに空港まで送って貰って
同じ便で発つ高橋くんと待ち合わせ。

『あ、高橋くん』

優斗「おはよう」

手続きを済ませてラウンジへ。

優斗「何か、すっきりした表情だね」

『ん？そうかな？』

頷く高橋くん。

優斗「那須くんには今日行くって言えたの？」

『ううん、ニューヨークに行くことはバレたけど』

優斗「そうなんだ」

ちゃんとお別れを言えなかったのは残念だけど
最後に嘘をつかなくて良かったと心から思う。

優斗「でもさ」

『ん？』

優斗「あそこにいるの那須くんだと思うんだけど」

『えっ、』

高橋くんの視線を辿ると確かに見えた雄登の姿。

優斗「 … 行かないの？」

『 …… 』

優斗「まだ時間あるよ」

椅子からなかなか動こうとしない私の背中を
立たせるように押す高橋くん。

優斗「ほら」

『 … うん』

優しく微笑む高橋くんを背にして
少し向こうでキョロキョロしている雄登に
ゆっくりと近づく。

『 …… 』

もう後二歩くらいで追いつくというところで
くるりと振り向いた雄登と
パチっと音が鳴ったように目が合う。

『雄登』

そう呼べば
彼はポロポロと泣き出した。

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