【碧】Yuto.N (ページ1)

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最初から間違いだったんだ。

「ははっ、俺もう勝ち目無いなー」

『 …… 』

哀しい癖に乾いたように笑うのは雄登の悪い癖で
こんな時に気の利いた事を言えずに黙るのは私の悪い癖

「 Aは知ってたの？」

『何にも知らなかった』

「つまり有無を言わせないって訳か」

学校から家に帰った私と遊びに来た雄登に
お姉ちゃんはニコニコしながら言った。

姉「私、廉と同棲することになったから」

その場を飛び出した雄登を必死に追いかけて
辿り着いた学校の屋上でもう2時間くらい

濃いオレンジ色に染まっている夕暮れの空を
寝転がって眺めている。

「俺、ずっと弟のままなのかな」

『そんなことないと思うよ』

空の色は暖かく見えるのに
頬に触れる空気はひんやりと冷たい。

『雄登、格好良くなったってこの前褒めてたもん』

「弟としてしか見てない癖に陰で褒めんなよ … 」

嬉しそうに笑うけど、その目に嘘は写せないよ

雄登の目はとても哀しい目をしている。

「 Aの中でも俺はまだ弟のまま？」

幼い頃から一緒に過ごしてきた1つ年下の雄登は
確かに弟だったはずなのに

いつの間にか弟なんて思えなくなってた。

… それはきっと私が雄登を好きになってしまったから

『ううん、弟なんかじゃないよ』

「やっぱりそれはそれで何か寂しいかも」

お互いそれとなく体を起こす。

「絶対奪ってやろうって思ってたのにな」

『そんなこと思ってたの？』

「うん、長期戦覚悟で」

雄登の気持ちは前から知ってはいたけど
改めて聞くとやっぱり辛い。

「昔から姉ちゃんって俺たちの先を行くよね」

『まあ … そうだね』

「近付いたと思ったらすぐ離れて行く」

ふいに視線を感じて雄登の方に顔を向けると
真っ直ぐ私を見つめて問われた。

「 Aも姉ちゃんみたいに俺から離れて行く？」

目の奥に見えた綺麗な碧色 …

純粋に寂しいんだ、雄登は。

『離れないよ』

「本当に？本当に離れない？」

『うん、私は雄登のことが好きだから離れない』

こんなこと言うべきじゃなかったんだ。

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