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「 はい 」
『 ありがとう 』
戻ってきた雄登から
手渡されたパックのいちごみるく 。
花火が上がるまで後3分
ブランコをギイッと揺らして
いちごみるくにストローを挿した時 、
雄登の携帯が鳴った 。
「 … ちょっとごめん 」
『 うん 』
眉を下げて電話に出た雄登を横目に
いちごみるくを飲む 。
とても甘いのにどこか酸っぱい気がした 。
「 えっ?ちょ … 」
「 今どこ?」
「 何?」
「 … うん 、すぐ行く 」
「 待ってて 」
花火が上がるまで後1分 、
何だか焦った声が聞こえて嫌な予感がする 。
そんな予感 、外れて欲しいと願うけど
電話が終わったらしい雄登は
何だか険しい顔で予感が的中したんだと
嫌でも理解してしまう 。
『 どうしたの … 』
「 ごめん!俺 、すぐ行かなきゃ …… 」
『 え … 』
「 本当にごめん … 一緒に花火見れない 」
勢いよく頭を下げた雄登に
意味が分からず思わずブランコから立ち上がる 。
「 姉ちゃんが … 泣いてるんだ 」
立ち上がった途端 、
またギイッとブランコの音がしたけど
そんな音も耳に入らないくらい
雄登の声がクリアに聞こえた 。
「 泣いてる姉ちゃんを放って置けない …… 」
鼻緒に擦れた足が少し痛んだけど
そんなの全然気にならないくらいに心が痛くなった 。
『 …… 行って 』
雄登が私の表情を伺うように顔を上げた
私は今どんな表情をしてるのか 。
『 早く 、早く行って!』
「 …… ごめんっ 」
私にしては珍しく大きめの声が出た 。
走って公園を出た雄登の背中が
角を曲がって見えなくなるとドンッと音が鳴って
空を見上げるとカラフルな花火が
いくつも重なるように打ち上げられていた 。
『 …… 綺麗だなー 』
憎いほど美しく 、
悲しいくらいに一瞬の出来事で
頬にツーッと何かが伝ったのがわかった 。
ああ 、雄登が去ってからで良かったと心底思う 。
もう一度ブランコに座ると
どこからか聞こえた 。
_____ 椎葉さん?
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めろんぱん(プロフ) - このお話が大好きで完結後も定期的に読みにきます( ; ; )みるるんさんの作品大好きなのでこれからも応援してます! (2020年7月13日 4時) (レス) id: 3589a32c79 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みるるん | 作成日時:2019年6月16日 2時