愛されたい症候群 短編集

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橙side



この空気は話さんとアカンよな。


嫌やなぁ。


話してもうたらみんなと居られんくなるやん。



橙「ホンマに聞くん？楽しないで？」

紫「別に楽しさとか求めてねぇから。」



ですよね。仕方ない。


ホンマは言いたくなかったし、一生自分の心の奥で鍵をかけて閉まっとくつもりやった。


けど、これからも暮らしていくのに、今回みたいな事があったら困るのはみんななんよな。


それなら話してまう方がええんかもしれん。


まぁこれを話してみんなと居れるとは思っとらんけど。


最後やと思ってみんなの顔を１人ずつ、しっかりと見た。


優しい目を向けてくれとるみんなに、泣きそうになったんは俺だけの秘密やな。



そっから、初めて学校で出会った日、いやもっと前の小学校の頃からの記憶を辿って簡単に伝えた。


簡単に言うても内容が濃かったから、それなりに時間はかかってしもたんやけど。



橙「もぉー、だから話したくなかったんよ。なんでこんな静かなん？！俺はみんなが笑ってる顔が好きやねん！」



話し終わった頃には１時間が過ぎていた。



橙「ほら、な？俺の過去なんて何の楽しみもなかったやろ？今度はみんなの聞かせてや！学校って楽しいんやろ？運動会とか文化祭とか修学旅行とかさ。俺なんにも体験したことないんやけどな。俺も１回でいいからやってみたかったんよね。卒業式にも出た事ないんやで？これって逆に凄ない？卒アルとかぜーんぶ端っこに載っとるんやろな。まぁ見た事もないんやけど。そや！やっぱ部活って楽しいん？女の子のマネージャーとかにキャーキャー言われたりしてさ。あっ、俺じゃモテへんか。みんなモテそうやもんなぁ。」



ここまで一気に話してんのに誰も何も反応してくれん。


あれ？やっぱ引いてもうた？そやんな。


これで、また１人の生活に戻るんやな。


そう思ったら悲しいのに、眠たくなったりはせんかった。


やっぱり気の持ちようなんかな。


みんなと居ったら甘えてまうんよね。


でも最後にハグくらいしたかったな。


こんな汚い俺じゃしてくれんやろうけど。



紫「康二。」



どうやって生きていこかなって考えてたら、ふっかさんに呼ばれた。



橙「どしたん？なんでそんな悲しそうなんよ。」



紫「おいで。」



手を広げて呼んでくれる。


ホンマはいきたいよ。


今すぐにでも飛び込んで抱きしめてほしい。


いっつもみたいに大丈夫って言ってほしい。


けど、俺にはそこにいく資格はない。

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