12 倉庫にて ページ14
国木田の返答に苦笑した太宰だが、さほど計画に影響は無いのか何も触れてこなかった。
「敦君これから暇?」
満面の笑みで彼に指を指す太宰に、敦は背筋に悪寒が走った。
「猛烈に嫌な予感がするのですが…」
「君が人食い虎に狙われてるのなら、好都合だよね。虎探しを手伝ってくれないかな?」
「いいい嫌ですよ!!」
ガバッと立ち上がって後方へ下がる敦。
「それはつまり餌じゃないですか!」と太宰に抗議の声を上げる。
そんな敦に悪魔の囁きが降り注ぐ。
「報酬出るよ?」
魅惑の報酬と云う言葉に、敦は固まった。
彼の中で揺れ動いているのが目に見える。
揺れている間に、太宰は国木田に何らかのメモを渡した。戸惑う国木田だが、太宰の真剣な眼差しで受け取った。
「ち、ちなみに…報酬はいかほど?」
両手を擦り合わせた彼に、太宰は紙に金額を書き「これくらい」と云って彼に見せる。
Aも覗き込むが、大した金額じゃないじゃないか。と思ったが、隣の敦の目は輝いていた。
…まじか。とボソッと声に出てしまったのは、また別の話。
_____
__
とある倉庫に移動した、太宰、敦、A。
太宰は本を読み、Aは入口に立ち空を見上げている。
敦はポツンと一角で体育座りをしていた。
Aは夜空を見上げながら、二人の会話を聞いていた。
本当にここに現れるのか?
本当さ。私は探偵社の一隅だ、心配いらない。
自信がある人は凄いな。
徐々に敦の声が小さくなるのを彼女は感じた。
ふと、振り返って敦を見た。
「こんな奴がどこで野垂れ死んだって…いや、いっそ…喰われて死んだ方が…」
膝に頭を擦り付けて、今にも泣きだしそうな姿。
Aは芥川に少し似ている。と目を見開いた。
太宰もそう思ったのか、何かを感じ取ったのか、当時の芥川に向ける面差しを敦に向けていた。
その時、夜なのに暖かい光が降り注いだ。
____月だ
雲の間から顔を出し始めた。
それを見たAは、扉を静かに閉めゆっくりと中へ進む。
『却説…』
「そろそろかな」
その刹那、倉庫内でガタンッと物音が鳴った。
音に驚いた敦が立ち上がって慌て出す。
「きっと奴ですよ太宰さん!!Aちゃんも早く逃げて!!」
『虎は上から来ませんよ。きっと何か落ちたンでしょう。』
「そんな事!!君がどうして判るんだ!」
正気を失った敦に、太宰は本を閉じて語り始めた。
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マナ(プロフ) - とても面白かったです!!続きがすごく気になる…頑張ってください!応援してます!! (2020年8月25日 19時) (レス) id: da5e25c6ab (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - かりんとうさん» こんにちは。楽しみにして頂いてありがとうございます...ただ、中々更新出来ず申し訳ないです(汗) (2019年5月21日 8時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
かりんとう(プロフ) - こんばんは、とても面白くてこの先に広がるこの作品をとても楽しみにしています!これからも頑張ってください!!! (2019年5月7日 21時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 音奏さん» その様に言って頂きとても嬉しいです(^-^) 更新頑張ります。 (2019年5月1日 20時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
音奏 - このような、素晴らしい作品を作れるなんてとても凄いです。続き、楽しみにしています。 (2019年5月1日 16時) (レス) id: 0e776977f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 | 作者ホームページ:http://fblg.jp/510814/
作成日時:2019年4月29日 17時