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既に砂へと帰している彼女の体を持ち上げることは叶わず、加州はAの視界に入るようにと身を屈め今にも泣きそうな瞳ですがりつく。
『……きよ、みつ』
力なく笑ったAに、加州の涙腺は崩壊した。
「やだやだやだやだ!!俺をおいていかないでよ!!」
『…ごめんね』
「主が逝くときは俺も一緒って言ってたじゃん!!」
いつしか交わした約束事を思い出しては、彼女は懐かしそうに目を細めた。
『そう、だったね』
「なら!」
『でも、やっぱり、私に穏やかな死は、この世界は、与えて、くれない、みたい』
既に掌が消失した腕で、加州の頬を撫でるが、数回往復しただけで彼女の腕が音もなく崩れ去る。
それを目にした加州は、目を見開くと更に大粒の涙を流し続ける。
『加州清光、私の初期刀。ずっと、ずっと、一緒にいてくれて、ありがとう』
「主っ……大好きな、俺のっ、主……主?……主っ!!ねぇ!しっかりしてよ!!」
加州が嗚咽をしながらも、Aを呼び続けるが、彼女の意識は徐々に暗闇へと吸い込まれていった。
_______________
彼女が次に目を覚ましたのは、何もない真っ白な世界だった。
此処が、俗に言うあの世というやつだろうか。
なんて思って、前に踏み出せば足元からジャラッと鎖の音。
視線を下に向ければ、両足に絡みつく重々しい鎖。
その鎖は、後方の真っ暗な闇へと繋がっていた。
私の行く先は、地獄なんだろう。
自虐的に、鼻で自分を笑う。
「あんたが地獄行きなんて、この世界は何を望むんだろうね」
ジャッと鎖が切れる音がした。そして、懐かしい彼女の声も聞こえた気がした。
後ろを振り返れば、繋がっていた鎖は消え、目の前に仁王立ちしている彼女を見て、両目から涙が零れ落ちた。
「なに、その湿気た顔」
『……舞』
「流石に馬鹿二号でも、名前くらいは覚えてるか」
『っ舞!!』
「聞こえてるわ」
『舞…なんで、ここに……』
「はぁ?“待ってる”って言ったと思うけど?」
「舞の言う通り!!」
「ちょっと便乗というか、なんていうか…」
舞の後ろから現れた二人、夏樹と凛に驚いてAの涙は急停止する。
『な、んで……』
「Aひどい!!皆でまってたんだから!!」
「まー、最初に死んだ私が待ってたのが始まり?なのかなぁ…なんて」
「一応、この馬鹿二号と口約束したのは私だけだけどね」
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都花 - 「五人は仲良く手を繋ぐと、眩しい程の光の中へと消えていった」で涙がが出た…この話とても好き…! (2020年8月31日 23時) (レス) id: e0ab5d8073 (このIDを非表示/違反報告)
絵理奈(プロフ) - 鬼滅とコナンと刀剣のクロスミックスかぁ。面白い (2020年4月28日 8時) (レス) id: e2382ac4cf (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - ましろさん» リクエストありがとうございます。期待に添えるように頑張ります(^-^) 本編の方も何周もして頂きとっっても嬉しいです!ありがとうございます、更新頑張ります! (2020年1月15日 0時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
ましろ(プロフ) - リクエスト失礼します。もしもの話で「天国で5人が再会したら」と「りくやが本丸に遊びに来たら」という内容のものをお願いします。 本編の方も何周も読みました。とっても大好きです。いつまでも更新楽しみに待ってます。よろしくお願いします。 (2020年1月12日 10時) (レス) id: 1d5253b3c1 (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - ベルさん» ありがとうございます!頑張って更新します(`▽´) (2019年12月18日 22時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 | 作者ホームページ:http://fblg.jp/510814/
作成日時:2019年4月29日 15時