136 紙一重 ページ7
スズメバチが飛び交う中、Aは羽音をBGMに問う。
『貴方は一体何に恐れているの?』
彼にとって確信をつかれたような言葉だった。
そう、優秀な人物が揃うAクラス。彼は今年、Bクラスから移動したばかりだった。
今年で二年生。卒業まであと一年ある。
だが、その一年という時間は彼を苦しめるものだった。
周りから浮いた存在。
それは、移動してきた人物が彼だけなのもあったが、他に他の誰よりも劣っているという事だ。
霊力の質、量、技術、戦術、知識。
自信のあった一年のうちに学ぶ殆どの事が、この数カ月で自信を失い、自分を追い詰めていった。
成長しない自分。周りに置いて行かれる孤独感。残り一年、本当に審神者として活躍できるのか。
かつて名を馳せた審神者や初代に憧れた自分に嫌悪感さえ募らせた。
何に恐れているか。
明白だ、己の無力さ。
けれど、教師からの目線で言えばそれは伸び悩みに言い換えられた。
彼はこの事実に気付けないだけなのだ。
その結果、彼は予期しなかった初代の登場にあらぬことを思った。
彼女に一泡吹かせれば、自分は皆よりも優れていると証明でいるのでは。と。
だからあんな無謀な事をしでかしてしまった。
そのことをAは知らない。
力試しに自分に襲い掛かる輩を何人も見てきたため、彼もその内の一人かと思った...のだが、彼の反応や霊力の流れを見るからに焦りを感じさせた。
故に何かを恐れているとの結論に至ったのだ。
これも彼女の経験あっての判断。
『その歳で
「買い被りはよして下さい。」
『買い被りするわけないでしょ?第一、生き物の式神を現役の審神者でも操れない者もいる。』
それでも蜂を納めようとしない彼にAは続ける。
『それに、私も貴方の歳で生き物の式神は操れなかった。』
「初代様っ!?」
慌てた様子で止めに入る教師たち。
蝶を簡単に操る姿に想像がつかない驚きか、彼女の完璧な初代という像を崩したくない嘆きか。はたまた他の叫びか。
確かに、十八の時には操れた。
けれど、十七の時にはまだ操るには程遠かったのは事実。
その言葉に驚いたのか、彼は目を見開いたのと同時に数多の蜂がはらはらと紙へと戻っていく。
目の前の光景に、彼と初代以外の全員が安堵の溜息をついた。
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Aqours?(プロフ) - 素晴しい小説を有難う御座います。本当にストーリーの構成やキャラクターの発言において全て読みやすいうえに解釈一致でした…改めて素晴しい作品を有難う御座いました。 (2023年5月1日 3時) (レス) id: f32673621d (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいましたw素晴らしい小説を作っていただきありがとうございます!!!! (2022年12月20日 12時) (レス) @page48 id: 3ad15612f6 (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - 1話から一気読みして来ました!ホントに面白くて時間をいつの間にか忘れるほどでした(笑)このような素晴らしい小説を作っていただき読まさていただきありがとうございます。完結おめでとうとございます!お疲れさまでした!! (2021年12月1日 19時) (レス) @page48 id: 920125ce92 (このIDを非表示/違反報告)
華音(プロフ) - こんばんは☆初めましてm(_ _)m刀剣乱舞アニメやゲーム大好きでコナンとのコラボ短編を含め全て読ませて頂きました(^ν^)ただ全体的に所々ではありますが誤字脱字が御座いましたので^^;御報告させて頂きますね。それではこれからも応援しております( ´ ▽ ` ) (2020年2月22日 19時) (レス) id: 85eea2d6ee (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 雪羅さん» 雪羅さんお久しぶりです!いつも暖かいコメントありがとうございます。中々更新できませんが、これからもよろしくお願いします。更新頑張ります(^-^) (2019年8月21日 20時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 | 作者ホームページ:http://fblg.jp/510814/
作成日時:2018年9月29日 22時