144 救われない ページ15
『いい?絶対に他の誰かに君の経験した出来事を一言でも言ってはいけないよ?』
「…言ったらどうなるの?」
『君はどうにもならないよ。強いて言うなら…私の首が飛ぶかもね』
首が飛ぶという言葉に、コナンはたまらず頭を上げAを見上げる。
だが、その瞳に映る彼女はふわっと笑った。
___なんでそんな顔が出来るんだ
その表情にコナンは背筋が凍った。
自分が死ぬかもしれないのになんで笑える?
その答えを彼はすぐに思いついた。
___ああ、彼女は今までたどり着けなかった死を待ち望んでいるんだ。そして、俺が言えば彼女は死ぬ事が出来るかもしれない。
彼女の口から聞いた忌まわしい記憶。
友に裏切られ、友に先に逝かれ、時に置いていかれ、死にも辿り着けない。
彼女のたった一つの願いは「死」
けれど、刀剣男士たちの願いは彼女の「生」
それを嘲笑うように縛り付ける天照の「呪」
「…Aさんはそんなに…そこまで……死を望むの?」
『望むわ。』
愛おしそうに語る彼女に哀れみの眼を向けてしまうコナン。
それを見た彼女は、悲しそうに眼を細める。
『その目は嫌い。』
コナンはゆっくりと濃霧へ足を進め、霧の1歩手前で歩みを止める。
「Aさん、例え僕が何かを話してもきっと貴方は
振り向かずに、そう告げるコナンに彼女は切なげに微笑む。
『救われない…か。君は優しいね、コナン君。あえて死ねないと言うのではなく、救われないと言う。』
「僕は、進んで貴方をを殺すような真似はしないよ。」
『…そう。』
知っている。と口に出さずとも伝わるその表情にコナンは眉を下げた。
『さあ、行きなさい。まっすぐ進めば元の時間に戻れる。』
「…僕、誰にも話さないから。」
そう言い残したコナンは、振り返らずにまっすぐ駆け抜けて行った。
『私を本当に思うなら…誰かに話してしまえばいいのに。』
君は私の苦しみを知らない。
君は私の悲しみを知らない。
君は私の地獄を知らない。
蘇る多々の記憶にAは目を閉じ、蓋をする。
迫る濃霧を門を閉じて阻むように、嫌な記憶に蓋をした。
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Aqours?(プロフ) - 素晴しい小説を有難う御座います。本当にストーリーの構成やキャラクターの発言において全て読みやすいうえに解釈一致でした…改めて素晴しい作品を有難う御座いました。 (2023年5月1日 3時) (レス) id: f32673621d (このIDを非表示/違反報告)
雫(プロフ) - とても面白くて一気に読んでしまいましたw素晴らしい小説を作っていただきありがとうございます!!!! (2022年12月20日 12時) (レス) @page48 id: 3ad15612f6 (このIDを非表示/違反報告)
雪モチ(プロフ) - 1話から一気読みして来ました!ホントに面白くて時間をいつの間にか忘れるほどでした(笑)このような素晴らしい小説を作っていただき読まさていただきありがとうございます。完結おめでとうとございます!お疲れさまでした!! (2021年12月1日 19時) (レス) @page48 id: 920125ce92 (このIDを非表示/違反報告)
華音(プロフ) - こんばんは☆初めましてm(_ _)m刀剣乱舞アニメやゲーム大好きでコナンとのコラボ短編を含め全て読ませて頂きました(^ν^)ただ全体的に所々ではありますが誤字脱字が御座いましたので^^;御報告させて頂きますね。それではこれからも応援しております( ´ ▽ ` ) (2020年2月22日 19時) (レス) id: 85eea2d6ee (このIDを非表示/違反報告)
朧月(プロフ) - 雪羅さん» 雪羅さんお久しぶりです!いつも暖かいコメントありがとうございます。中々更新できませんが、これからもよろしくお願いします。更新頑張ります(^-^) (2019年8月21日 20時) (レス) id: 061be1d3a8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:朧月 | 作者ホームページ:http://fblg.jp/510814/
作成日時:2018年9月29日 22時