Ep.227_天才�� ページ33
・
「……でもAヒョン、ラップ出来ますよね。本当は創作ラップだって得意なんじゃないですか？
ヒョンはボーカルの延長で教えてくれたけど、僕は分かってましたよ」
A「あはは。よく分かったね。どうして？」
僕の問いかけに、Aヒョンは少し目を見開いたあと、直ぐに穏やかな笑顔に戻った。
(……ああ、やっぱり。Aヒョンはラップが得意なんだ)
思えば、Aヒョンがラップが得意なことは一緒にいてなんとなく分かった。
最初は発声や音程、リズム感の指導ばかりだった。でも基礎練習を重ねていくうち、僕が歌詞やフロウに悩んでいた時にはヒョンはそれとなく"正解"に誘導してくれた。それは"正解"をそのまま伝えるんじゃなくて、僕の中にあるたくさんの"答え方"を引っ張り出してくれる＿＿そんな感じだった。
きっとこれはかなりラップが出来る人じゃない出来ないことだし、ラッパーの考えも理解しているAヒョンだから出来たことなのだ。
「ラッパーのカンです」
そんな理由はなんとなく言葉にはできなくて、つい冗談みたく言った。
僕の答えにAヒョンは、勘かぁ、と繰り返し呟いた。
「どうして隠してたんてすか？」
A「隠してたってわけじゃないけれど、うーん……見せるタイミングもなかったしなあ。私はボーカルだし」
考える素振りをした後に、Aヒョンはそう言った。
「嘘です。Aヒョンはなんでも出来るじゃないですか。見せるタイミングなんていくらでもあったはずです」
僕の言葉にAヒョンはさっきよりも大きく、長く目を見開いた。そして目をぱちぱちさせた後、可笑しそうにケラケラと笑った。
A「すごいね、ドヒョニ。本当にすごい。
ドヒョニはちゃんと周りを見てるんだね。やっぱり、マンネだからって舐めてちゃ駄目だなあ」
私の負けだよ、床に仰向けで倒れ込んだAヒョンの顔は何故か晴れやかだった。
A「……ドヒョニはさ、私を"天才"だって思う？」
倒れ込んだまま、ごろりと僕の方見やる。
「＿＿え？」
思ってもみなかった質問に今度は僕がびっくりした。
そんなの、ヒョンに会った最初からずっとずっとそう思っていた。きっと他のみんなもそうだ。
A「……ドヒョニ。私はね、自分で"天才"であることをやめたの」
だから私は何にも出来ないんだよ。
僕の考えていることが分かったのか、Aヒョンは微笑みながらそう言った。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 156人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
カナル式(プロフ) - 弟丸。さん» コメントありがとうございます。更新待っていただき有難いです。これからもよろしくお願いします(*^^*) (2021年2月26日 20時) (
レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
弟丸。(プロフ) - 久しぶりの更新とてもうれしいです！続編も楽しみにしています^^ (2021年2月26日 13時) (レス) id: 6fd7fc297b (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - 菜の花のからしあえさん» 返信遅れて申し訳ありません> < ありがとうございます！ 更新頑張ります！ (2021年2月26日 1時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
菜の花のからしあえ(プロフ) - すごく面白いです！続き待ってます！更新頑張ってください！！ (2020年12月29日 10時) (レス) id: eb3cbc1812 (このIDを非表示/違反報告)
カナル式(プロフ) - 鷹の翼さん» コメントありがとうございます！ 本当に嬉しいです。更新頑張るのでこれからもよろしくお願いいたします(^ ^) (2020年8月8日 9時) (レス) id: 0d79bc4d43 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：カナル式 | 作成日時：2020年7月12日 0時
